司法省・記者会見のメッセージを読み解く
先日の司法省による記者会見の場面をどう「読み解く」かがポイントだ。ウィテカー司法長官代行によるファーウェイ起訴に関する記者会見である。
本来、その場にいるはずのないロス商務長官が同席していたのだ。これは異例で、そこには込められたメッセージがある。実は輸出管理による制裁は商務省の権限であり、これを匂わしたものと関係者の間では受け止められている。そして質疑ではわざわざZTEにも言及している。
ファーウェイ自身もそうした米国の意図を既に読み取って、深刻にとらえ、対応を検討しているようだ。
最近、ワシントンでは対中国政策でしばしば「隔離」という言葉が使われていることは要注意である。グローバル経済に組み込まれた現在の中国を「隔離」することは、もちろん非現実的だ。しかし特定分野、特定ターゲットだけに限定しての「隔離」は真面目にワシントンで議論されているのだ。
なお、こうした動きはトランプ大統領の米中取引外交とは独立したものだ。しかし今後の「かく乱要因」はトランプ大統領だ。ファーウェイ問題もトランプ大統領は中国との取引材料にしたがるだろう。
日本企業にとっては深刻な問題
製品だけでなく、サプライチェーンまで遮断するとなると、日本企業にとっては他人事ではなく、深刻な問題だ。現状でも日本の部材メーカーのファーウェイへの売り上げは5000億円にも上ると見られる。さらに今後成長すると見込んでファーウェイへの売り込みを強化しようとしている日本企業も多い。
米国が「懸念顧客リスト」に載せて原則輸出不許可の運用をすると、日本政府による輸出管理の運用もそれを“参考にする”のが通例だ。しかし、どこまで“参考にする”のかは明確ではない。
あくまで機微度に応じたケースバイケースの判断だが、その際必要な独自の安全保障情報が脆弱なのは日本の構造的課題だ。従って日本企業も狭間に置かれて、白黒がはっきりしない難しい判断が迫られることが懸念される。
また日本で生産されたものの中に米国産のものが25%以上含まれていると、米国の規制対象になる(再輸出規制)ことも日本企業は要注意だ。不注意で米国の規制違反になることがあってはならない。
経済的利益よりも安全保障が優先されるステージに入ってきた。経営者は安全保障による経済的コストの負担もあり得るとの覚悟が必要だ。しかしファーウェイは日本の部材メーカーにとっても重要顧客であるだけに対応が難しい。顧客、市場を失いたくはないが、どこまでの付き合いが許されるか不透明だ。
自分で判断して線引きしなければいけないという、日本企業の不得意な世界に突入する。いわば“踏み絵”を踏まされるようなものだ。担当者任せにはできない経営判断だ。日本企業の経営者にとって、「リスク・マネージメント」がキーワードになる。
これは企業だけではない。大学もそうだ。特に日本の大学は無防備だ。
オックスフォード大学などはファーウェイと共同研究を今後受け付けない方針だ。
米国の大学へは米連邦捜査局(FBI)は監視の目を光らせていると言われている。大学なども含めた共同研究も注意深さが必要になってくる。
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