全6185文字

韓、墨、加が陥落した米国の“脅し”の手法が待っている

 さて対米輸出を抑制させるために米国の交渉責任者であるライトハイザーUSTR代表が繰り出す手法が、自動車の「数量規制」だ。

 韓国、メキシコ、カナダは米国に高関税で脅されながら、「数量規制」を受け入れさせられた。メキシコ、カナダは自動車輸入への追加関税を免れるために、数量規制を飲まされた。米国への乗用車輸出数量が260万台を超えると、25%の関税が課されるというものだ。

 

 関税引き上げを脅しにして、対米輸出の数量規制に持ち込む。これがライトハイザー代表の手法だ。それを弱い国から攻め落としていく。最後に残った本丸がEUと日本なのだ。

 

 ただし、25%の高関税が“脅し”としての意味があるかも冷静に見極める必要がある。

 

 仮に自動車の高関税が実施されれば、米国の株価は大幅に急落することは最近の米国の株式市場の乱高下を見ると容易に予想できる。トランプ大統領にとって株価の下落は再選戦略として何としても避けたいところだ。

 

 昨年と違って、今や25%の高関税を現実味のある“脅し”として恐れる必要はなくなりつつある。

 

 しかも現在、鉄鋼で発動された措置についてWTO提訴されているように、これが発動されれば、WTO違反だ。もちろんWTOの実効性が揺らいでいる中で、どこまでトランプ政権への抑止力になるかは疑問ではあるが。

 

脇の甘い見通しを“町人の賢さ”と錯覚するな

 

 外交経験のある識者の中には、こう主張する人がいる。

 

 「数量制限に持ち込まれたと言ってもかなり大きな数量枠なので実態としては大きな影響はない。日本も大騒ぎすることなく対応すればよい」

 

 これはとんでもない見当違いで、甘い見通しだ。

 

 現在、メキシコから米国への乗用車輸出が170万台なので、260万台の数量規制ならば今後5割程度増やす余地がある。これならば何ら実害がないからいいじゃないか、と安易に考えてしまうだろう。それは素人考えだ。

 

 これは米国のビッグスリーがメキシコで生産していることが背景にあるのだ。メキシコの対米輸出はここ5年を見ても、年平均1割は伸びている。今後もビッグスリーの対米輸出に支障のないように枠に余裕を待たせているのだ。ビッグスリーが生産していない日本に対して、同じように余裕のある数量を米国が認めるだろうか。

 

 そもそも仮に日本、EUにまでそんな余裕のある数量を設定すると、全部足し合わせると、米国の自動車の輸入総数はとんでもなく大きな数字になる。それでトランプ大統領は支持層に成果として誇示できるはずがない。

 

 数量規制に対して、原理主義的に反対しているわけではない。

 

 かつて日米貿易摩擦華やかし頃、米国に対する土下座外交との批判に対して、天谷直弘・元通産審議官は「町人国家論」を唱えられた。日本の置かれた立場は「町人」であるのであるから、町人の頭の柔軟さで実質的なダメージを受けない方策を考えて対応すべきだとの論だ。商人道の実利主義であるべきだとの基本スタンスに異論があるわけではない。

 

 問題は実害がないかどうかの見通しの問題だ。

 

 メキシコ、カナダのような緩い数量規制になる可能性はないと見てよい。そして厳しい数量規制は国内の生産と雇用に直結する。