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日米通商交渉で米国の出方には要注意だ(写真:ユニフォトプレス)

 いよいよ今年は日米通商交渉の正念場だ。米国の政府機関の閉鎖の影響もあってスタートは大幅にずれ込むだろうが、確実にヤマ場はやってくる。米中の貿易戦争もとりあえず90日の休戦で暴発を免れてはいるものの、休戦期限までに米中が合意できるか予断を許さない。仮に合意ができたとしても、それは単なる“小休止”にすぎない。

 

 「仮に米中が何らかの合意をしたら、矛先が日本に向かう」と、一見もっともらしい指摘もあるが、今のトランプ政権は米中での合意のいかんにかかわらず、日米関係は厳しくなると見た方がよい。

 トランプ大統領は今や、ねじれ議会を思うように動かせず、ロシア疑惑も迫ってくる。内政でフラストレーションが溜まることで、2020年の大統領再選に向けて、外交での成果を誇りたいというのは自然だ。日本もその例外ではない。

 

 正念場を迎える日米通商交渉。日本政府は「自由貿易協定(FTA)」への農業関係者の強烈な拒否反応から、FTAという言葉を避けて「日米物品貿易協定(TAG)交渉」と呼ぶ。しかし、特定国に対して関税引き下げをしようとすれば、実質的にすべての貿易について関税撤廃しなければいけないのが、世界貿易機関(WTO)の明確なルールである。一部の品目だけのつまみ食いはルール上できないのだ。

 

 従って、呼称をどう取り繕おうが、実態はFTAである。この点は拙稿でも述べたところで、この呼称はここでは使わない。むしろ米国は“大本営発表の呼称”をそのまま使っている日本の報道を冷ややかに見ている。呼称がどうであれ、本質はそこにはない。

「早期妥結をめざす」、日本外交の悪い癖

 

 交渉の焦点は農産物と自動車だ。

 

 そのうち農産物は米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した結果、競争相手の豪州などに比べ相対的に関税で不利になった米国の農畜産業界の不満解消が急務だからだ。従って早く合意したいのは米国側だ。日本側は交渉にじっくり構えればよく、慌てる必要はない。

 

 日本政府の中には6月下旬の20カ国・地域(G20)首脳会談に合わせて行われる日米首脳会談までの交渉妥結を目指す向きもある。しかし自分から交渉期限を設定するのは「交渉下手」と言わざるを得ない。

 

 欧州連合(EU)との交渉も、農産物を交渉対象とするかどうかの入り口論で難航しそうだ。日本も交渉の土俵をどう作るか、腰を据えて交渉し、米国の言い値通りにする必要は毛頭ない。

 

 「日本が遅らせようとしているとの濡れ衣を着せられないように、速やかに対応する必要がある」との指摘もあるが、ここはむしろじっくり構えるべきだろう。常に早くまとめたがるのが日本の外交当局の悪い癖だ。交渉ポジションを見極める冷静さが欲しい。