居林:なるほど。それでいいと思うんですよ。債券には基本的に償還日がある。そこが株との大きな違い。普通は発行日から償還日までの途中で買うわけですね。途中いくらで買うかと、償還日までの時間の長さが勝負の鍵になります。もちろん、発行主体の企業がつぶれるかつぶれないか、も大きな判断基準ですが。

と、理屈は分かる気がするんですが、どうも具体的に腑(ふ)に落ちません。株式と比べるとどう違うんでしょう。

居林:いい視点です。私はよく言うんですけど、「債券は償還の100に向かって動いていく投資」で、株式はこれと正反対で「100から始まって上下に大きくぶれる投資」です。

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なるほど、時間軸に対する動きが正反対なんですね。

居林:そうなんです。株式の場合、買い付け価格を100として、次の日に倍になる銘柄なんてそうはありません。何年かたってみると「うわ、上がったね」「下がっちゃったね」ということになる。100から始まって、プラス、あるいはマイナスに大きく発散していくイメージです。この図はイメージで、株価は上がり(下がり)始めるとずっとその方向に動く、なんて意味ではありませんので、念のため。

 というか、長期で業績が伸びるものは株価も伸びていくし、業績が下がるものは株価も下がっていくと。というのが、株式投資の基本だと考えています。株式投資で長期投資が大切なのは企業業績は世界経済の伸びに伴って上昇すると考えられるからであり、分散投資が必要なのは数年先、数十年先の企業業績を予想するのは容易ではないからです。

なるほど、分かりやすい。

債券の利払いは日割りではいる

居林:債券と株式、この2つが、時間軸に対する価格変化がまったく違うということは、投資をするならぜひ覚えておいていただきたいと思います。というのは、これは性格や思考パターンによって、向き不向きが分かれるように感じられるからです。自分はどちら向きの投資家なんだろうと考えて、アセットアロケーション(資産配分)するのがいいんじゃないかなと。

具体的に言っていただくとどうなりますか。

居林:株式投資は、業績が良ければ上がり、業績が悪ければ下がる。同時に、時間の関数でもあるんですね。明日、業績が倍になる会社はないので、業績が長い目で見て上がっていく会社なのか、長い目で見て下がっていく会社なのか、この辺を理解しようという意欲のある人は、株式を。そうではなくて、「今、米国の長期国債に投資すれば確実に4%弱のリターンをドルでもらえる、それでハッピーだ」という方は債券がいいと思うんですね。高格付けの社債ならもう少し高い利回りになります。債券を直接買うには資金が必要ですから、小口で買いたい方は投資信託などがいいかもしれません。発行体がつぶれなければ利払いは日割りで入ります。

あっ、そうなんですね。配当とは違うんだ。

居林:はい、知らない方もたまにいるんですけど、株式の配当のように特定の日に持っている必要はなく、保有期間だけ債券はチャリン、チャリンと日で利払い分を稼いでくれるのです。

知らなかった。

居林:債券は、償還日に向けてだんだん値動きが小さくなるんですよね。もうあと3カ月しかない、1カ月しかない、いやいや、3日しかないとなったらさすがに債券価格は動かないですよね。

なるほど。それにしてもなぜ今、株式と債券の話をする気になったんですか。

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