しばらくお休みしている間に、株式市場の空模様が一気に怪しくなりました。

居林:米国株が直近高値から20%以上落ちています。一時、S&P500指数で見てマイナス21%まで下落したので、いわゆるピークから20%下がると弱気相場、という定義に照らせば「弱気相場入り」したということになります。

居林さんの前回の見方から、変わったところはありますか?

居林:はい、あります。今までは「株価は業績に対して割安」という見方で市場を見ていましたが、株式市場が、インフレ懸念、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ、そして景気後退局面。こういうものを次々に織り込んでいく姿から「株価は確かに割安ではあるものの、これは回復に少し時間がかかるな」と思い始めました。 

 今振り返ると、新型コロナ対策で景気のアクセルをふかし過ぎましたね。「量的緩和政策は、少なくとも米国はもうやめるんですよね、金利も上がったので、消費に影響が出始めていますね、そうすると企業業績がここからピークアウトしますね、景気の先行きも期待しにくいですね……」というのが、現在の概観です。経済に大きな影響を与えるファクターが悪化する、それを、先へ先へと株式市場は織り込んでいます。となると、「景気はこれ以上悪くならない」となるまでに、しばらく時間がかかるんだなと考えるのが自然でしょう。

割安と分かっていても簡単には戻らない状況

「株価は業績の関数」がこのコラムの連載開始以来のテーゼですよね。もうちょっと厳密に言うと、いま現在ではなくて未来の業績、つまり実際には、業績予想の関数ということでした。

居林:そうです。この連載では、1年先のコンセンサス(業績予想を行うアナリストの予測値をまとめたもの)を株価と重ねたグラフを使って、市場の先行きを考えてきました。それが現状はどうなっているのか。米国と日本で見てください。

左軸:予想EPS(ドル)、右軸:S&P500
左軸:予想EPS(ドル)、右軸:S&P500
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(単位:円)
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1年後の業績予想の線を株価が大きく下回っていますね。これは「現状では割安に評価されている」ってことになるはずですが。

居林:そのように前回連載まで申し上げてきました。しかし、米国などでのインフレと金融引き締め策は我々の予想を超えていました。このため、予測は変更しなければいけません。現状が割安、というよりも、株価が悪化する業績を先に織り込んでいる、そのような状態と見えます。

 株価が先へ先へとトレンドを織り込んでしまう、というのは2021年の2月に日経平均が3万円に行った時の逆を見ているようです。このときは「いいこと」を織り込んだわけですが。そして、中央銀行の金融政策はしばらく金融引き締めのままでしょうから、割安なのはわかっていても株価は上がりにくい、という状態と考えるわけです。

言われてみればさっきのグラフも、業績予想の線は頭打ちでしたね。

居林:そうですね。市場は慎重で「来期にかけてすでに頭打ち」というシナリオを織り込みつつあることを示しています。問題は、これまで連載で「買い」を推奨してきたときは、ブレグジット(英国のEU離脱)も新型コロナも、最近ではウクライナ危機もそうでしたけれど、「何か事件が起こって、それに対して株式市場が下げで反応した」、言い換えれば具体的な何かが起こったときでした。

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