金利上昇が話題に上ることが多くなってきました。「超緩和金融政策」、スーパーヒーローが支えてきた株式市場の勢いが、これで途切れてしまうのではないか、という。
居林:「債券市場×ウルトラマン=株式市場高騰」でも触れた話ですね。
金利は株式市場にどうやって影響を与えているのか、というのは、なかなか難しい論点です。実証研究とか論文とかいっぱい出ているのでそっちへ行ってもいいのですけれども、今回は問題提起から始めたいと思います。
はい。
居林:「株式市場にとって本当に大切なのは金利なのだろうか」。
と聞くからには、大切なものは別にあるんですよね。なんでしょう?
居林:「実は大切なのは流動性ではないですか?」ということです。
あ、なるほど。買いたいものを売る人がいるか、買った物が売れるか、という「流動性が」まずありますね。
居林:そう。株を買った人というのは、この後、自分の後に列に並んでさらに買ってくれる人がいることを期待して買うわけですよね。だって、自分で買い手の列の一番最後にいて、あとは売りの人しかいなかったら大変困るわけです。「自分より後に買う人がいるんだ」と信じて買っているわけです。
ということは……。
居林:そうです。株式市場の参加者にとって本当に大切なのは、「自分の後ろに並んでくれる人がどれだけいるんだっけ、この列もっと伸びるんだっけ」と、簡単に言うとこういうことであります。
流動性はまずETFでチェック
流動性の説明でこんなに分かりやすいのは初めて聞きました。
居林:金利についていろいろな考察をしてもよいのです。例えば米国のFED(米国連邦準備制度)の10年債の金利は今1.5%ぐらいですが、2%を大きく上回ることは考えにくいです。それでもコロナ以前の水準からはかなり低い、とか。しかし問題は金利ではないと私は思うのです。今の株式マーケットの持続に本当に必要なのは流動性ではないかと思うのです。つまり、「次に買ってくれる人がまだいるんだろうか」ということです。
では、流動性をどうやって測るんだという話をお聞かせください。
居林:一番簡単なのは、ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)です。
ETFは「上場されている投資信託」……ってそのままですけど、普通の投資信託は証券会社、銀行や郵便局の窓口でその会社から買うわけですが、ETFだと証券会社を通して「市場で売買できる」ってことですよね。
居林:そうそう。ETFへの資金流入というのは、流動性を見る上でとても大切な指標になると、私は思っています。
まず、ETFの仕組み自体がわりあい新しい。もともとインデックスファンドの代わりとして作られた側面があるんですね。「日経225のインデックスをできるだけ安く買いたい、高く売りたい」とか、「毎日売り買いもできるようにしてくれると便利だな」とか、「ハイテク銘柄がうまくまとまったETFが欲しいな」という……分かります?
あ、そうか、すぐ買えてすぐ売れる。それってまさしく「流動性」ですね。
居林:はい。ETFは構造的にマーケットに流動性を与える仕組みだと思っています。
なるほど。
居林:「SPAC(特別買収目的会社)」、いわゆる「空箱上場」もそういう面があります。マーケットに本来アクセスできなかった銘柄をぱっと捉えて、それをETFで上場するとお金がどーんと入ってくる、というのがここ何年かの流行(はやり)なわけですよね。今の流行物を見つけるのは、ファッションと一緒で大切なのです。
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