居林:今年の年頭は強気論が席巻していたのですが、弱気論の人もきっといたんですよね。その人たちが「やっぱり来たぞ」と思って、さらには強気論の人が弱気論に転回した結果、オーバーシュートが起こって、そしてまた「弱気過ぎた」と逆に振れた。強気論、弱気論とも、振れ過ぎたときにはやっぱり注意しなきゃいけません。そしてこれはあくまで「株価は予想利益の関数」という私の考え方から導かれる理屈なので、よろしければ参考にしてください、という話です。UBSのCIOのリポートは現在日本語バージョンをこちらで公開しています。私の以外にもたくさんのリポートが日本語でありますので、ぜひご覧ください。

 次は、「今の水準はどうなんだ」という話で、これは当然「次はどうなるんだ」という予測につながります。

はい、ぜひそこが聞きたいです。

現状の株価水準をどう考えるべきなのか?

居林:この2万3000円をどう思うのか(この取材は6月11日に行われました)。仮に、EPSの水準がいくらまで戻ったら株価とマッチするかというと、えび茶色の線は1400~1500円までいくわけですね。つまりコロナ前も前、2018年12月ぐらいのこのグラフ内でのピークの時期の日経平均のEPSです。この時点で何があったかといえば、米中貿易問題が発生する前です。

 厳密な議論としては議論の余地がいっぱいありますよ、金利の水準が違うじゃないかとか、為替が違うじゃないか、金融・財政政策が違うとか。でも、大局的に見ると、そんなふうに私には見えました。ここまで大丈夫ですか。

ひとつ思ったのですが、このグラフは「業績予想の数値をいずれ株価が反映する」と考えて見てもいいものなのでしょうか。

居林:すごくいいポイントですね。普通はそれでいいと思います。業績予想に対して株価の現在位置を考えるということです。しかし、今回はあまりに大きなV字なので、まず「現状の株価水準を肯定するとしたらどういう状況が考えられるか」から思考が始まって、「日経平均のEPSは1400~1500まで戻る必要があるだろう。そうなると、コロナ以前の水準に業績が戻ることが条件になる」と進めていくわけです。

 現状を肯定できるシナリオを書いてみて、そのときに予想EPSが現状からどこまで変化するか、というのを考えるわけですね。

つまり、仮説を立てるときのプロセスとして、今回は強気の業績予想のケースも考えて、それと現在の株価を比べてみると。

居林:そうなのです。自分が弱気判断をしていても、強気のシナリオを描いてみます。それでも現在の株価が十分に高い、というときには私は弱気判断を維持します(強気判断をしているときには逆に弱気シナリオを描きます)。

 前回の連載の時点では、全体感としての判断はやや強気であったものの、不透明感が強過ぎて予想業績だけでは判断できませんでした。そのため、個別銘柄の年初来の分布から見て、非常に多くの銘柄が大幅に下落したままであり、一部の銘柄が相場の反発を引っ張っている状況だ、と判断しました。 

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 よって、前回は強気を維持しました。スペイン風邪は第2波のほうが被害が大きかったじゃないかという反論はありましたが、ワクチン開発が期待できるとそのスピードは速いだろうと思われたことと、政府の支援策が財政規律の枠を超えて行われていたことから株価がマイナス材料を十分織り込んでいると考えました。

 3月5日の「孫正義氏の決算発表動画は、投資家の教科書だ」の最後の方に書きましたが、「分からないことがあるのに意思決定をする必要があるというのが投資のプロセスの勘所」だと思っているので、この後は「外れる可能性のある意思決定をどのようにマネージするのか」を話したいと思います。

お願いします。

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