居林:今回の乱高下は、このような「投資家心理」でどれだけマーケットがぶれるかという、いい参考事例になったと思います。投資家心理でマーケットが大きくぶれるということは、投資家の心理は、そのとき、そのときのモメンタムで決まるのであって、恒常的、トレンド的に正しいか、間違いかをあんまり示していないと考えています。

 なので、常に自分の中で強気論と弱気論を両方展開しようね、というわけですね。

そうすれば少なくとも、びっくりすることは減る。

居林:そう。マーケットが自分の考えと逆に行ったからといって、自分の考えが間違っているとは限らない、ということでもあります。実際に、今回の値動きで「これは自分の投資軸が誤っていたのか」と、動揺してしまう個人投資家の方は、かなり多かったと思うんです。

マーケットに自分の考えを操られるな

居林:私が何を一番言いたいかというと、「マーケットが自分が思っているように動かないからといって、動揺して自分の考えを変えるのはやめよう」と。マーケットの動きで自分の考えをジャッジするのではなくて、マーケットの動きでマーケットの投資家の心理を理解するのであって、自分の考えをそれにアジャストするのは、たぶんあんまりいいことではないんですよね。

 マーケットを観察することは大切です。そして、マーケットが何を考えているのかを理解することは、もう決定的に大切なんですね。

 これなくして投資判断は存在しないと言いたいくらいです。つまり「マーケットはこういうことを考えて、今こういうふうに動いているんだな」ということを理解するのと、「だから自分が間違っている」とか、「自分の投資判断は正しい」とかいう投資判断を判定するのは違うステップなんです。一緒にしてはいけない。もちろんその実戦の過程で投資の哲学というのをつくっていくわけですが、自分の思っていない方向に市場が動くと、自分の判断を自分で容易に否定してしまいがちなことが邪魔をします。これは、心理的に楽になるのですが、だからといって正しいとは限りません。市場は短期的にはランダムなのだと思います。

 自分の考えとは違う方向に市場が動いた、そこまではいいんです。観察として正しいです。が、「だから自分の考えは間違っている」というふうに皆さんなりがちなんですね。これが動揺のもとですね。

「ああ、間違えた、マーケットが僕の思っているのと逆に行った。僕の考えが間違っていたからだ、どうしよう」となるわけですか。「でも、自分の判断ミスで資産を減らしたとしたら、そりゃ弱気にもなるよね」とも思えるんですけど……。

居林:そうですね、思考のステップとして陥りがちですよね。私も散々痛い目をみましたから分かります。さっき、「マーケットは、強気も弱気も、信じる人は常に両方いる」と申し上げました。

はい。

居林:ですので、どちらか片方が一時的に優勢になることは十分あり得ます。それはご自分の投資分析とは相いれないことも当然あるでしょう。でも「そういうこともある。それがマーケットなんだ」と分かっていれば、動揺しなくてもいいんです。失点も試合の一部なのだという言葉もあります。常に自分の判断が正しいと思え、ということではないです。でも、市場の短期の値動きが読みと違っても、それは間違いの証拠にはならない。そこを判断するには……。

判断するには?

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