投資会社への視点、事業会社への視点

はい、この上昇をもって、「投資家として評価せよ」ということ自体は間違ってないと思うんです。なんですが、「一般的な企業の決算発表の場」として聞いてしまう自分からすると、あたかも、事業会社(投資業務が主ではない企業)の業績が好転して、一気に数字が上がったかのように感じられてしまう。この数字は本当に経営判断のたまものなのか、市場のボラティリティ(価値の変動)がいい方に転んだだけじゃないのか、と……。

居林:なるほど、そういうことですか。おそらく言いたいのは、事業利益と株式市場で付く時価総額との比較が、そもそもかみ合っていない、ということですね。いまやSBG自体が“投資会社”なので、投資家の皆さんが投資会社を評価することは、普通の事業会社を評価するのと物差しが違いますよね。

 普通の事業会社は事業価値が市場で表示されていません。株式アナリストなどがその計算をやるわけですが、期間利益の増減が将来の事業価値、ひいては企業価値、ひいては株主価値、ひいては株価を左右するという経路をたどります。なので、期間利益が「増えた」「減った」で私たちアナリストが騒ぐわけです(居林個人としては、「将来の期間利益の現在価値=企業価値-負債=株主価値」であり「株主価値/(予想される)株数=株価」と考えています)。

 ところが、投資会社の場合には投資しているものが上場しているので、投資対象の価値が株式市場でバチンと計算できる。なので、会計上の期間損益よりも持っているものの価値の合計が投資会社の価値だろう、という主張になるわけです。

まさしく。孫さんは、「我々は投資会社なのだから、投資先の株価の上昇分マイナス負債、つまり株主価値で評価せよ」とおっしゃる。そこはよく分かるし、損益で評価されても納得できない、ということも分かる。前々回に居林さんがされたお話ですね。

居林:別の言い方をしますと、仮にですよ、来期、SVFの投資先の株価が下落して株主価値が下がった、あるいは変わらなかった。けれど、投資先の営業利益が増加した。そういう状況で「営業利益は好調だ」と孫さんがおっしゃったら、これは違うということになりますよね。

「営業利益は上昇傾向だから、いずれ株価にも反映する」とか言いたくなるところですが……。

居林:それは言っちゃいけないわけですし、おそらく言うことはないと思います。前回の決算発表で、「SBGは投資会社である、経営指標は株主価値だ」と宣言し、今回はより分かりやすく同じ主張を述べられた。ここまでの孫さんの発言は整合性がとれているし、正しい。もっと言うと、孫さんは投資家として「皆さんも投資家でしょう。だから、同じ目線で見てください」と、メッセージを送っているわけです。

市場動向で営業利益が変動する。だから?

居林:私も投資家としてこの連載で「見るべきは過去の期間利益じゃないんだよ」という理解をしていただこうと、ビルの大家さんの例とか出しましたけれども、孫さんはさすがに一発で決めるわけですよ、ばしっと。「なるほど。こう言えばいいんだ」と。ウサギとカモで1発でやっつけた。

アヒルです。でも、我々がもし「投資会社の評価基準は株主価値だ」、という話を聞かされるなら、その前に、評価の基準になる株式市場の性格を知っておかないと、大変な誤解を生むんじゃないかと思ったわけです。市場自体にもともと大きなボラティリティがあることを認識していないとまずい。はっきり言ってしまえば3000億円、5000億円の浮き沈みというのは、市場全体の変動幅で大半が説明できてしまうかもしれないですよね。

居林:まったくその通りです。もう一声。

すみません、もう品切れです。

居林:まず孫さんは、「26億の(のSBGの営業黒字)であれ、3000億(のSVFの黒字)であれ、私に言わせればどっちにしろ誤差だ」とまで言っていますよね(31分40秒前後)。

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