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居林:金額が大きかろうと、予測は予測だと言われようと、株式投資は「下値がなくて上値があればいい」んですよ。これは「買い」から入る話ですけどね。

つまり、いくら以下にはならない、という見切りができたときに買えばいい、ということですね。

居林:そうです。どう下がってもこの価格にまではならないだろう(=この価格までは戻るだろう)、という「下値が大丈夫だ」と思えるときならば、投資としては合理性がある。先ほどのトヨタの例で言えば、トヨタの価値って米国でリコールしたときには何千億円と損失が出ました。

 でも、これまた「だから?」という話です。それを吸収できないわけじゃないし、トヨタがこれから「カイゼン」をしないなんてとても思えない。素晴らしい車を造り続けるはず。だから、未来の価値から見れば、リコール時の株価は買い時ということになる。

そう言われると、その下値はどうやって算出するのかが気になるわけですが。

居林:方法はいっぱいありますが、一番簡単なのは株主資本なんですよ。前々回にやりましたね(「内部留保をため込む企業は『けしからん』か?」)。

極端な例が、株主資本(資産-負債)よりも時価総額が下がっているケースでしたね。会社を解散して残るお金のほうが、理屈では株価の合計よりも大きい、という。

居林:前々回との重複を恐れずに繰り返せば、株主資本って、投資家が会社を信じて株式を買ったお金に利益が乗っかったものですよね。これが株式市場では、普通は、株主資本として入れた何倍もの額で取引されている。なぜ株主資本以上の額になるかと言ったら「将来はこの企業がこれくらい(FCF、もしくは純利益を)稼いでくれるだろう」という期待値ゆえです。

それは業績予想とは違うんですか。

結局は推定値でしかないが、リスクを下げることはできる

居林:来期儲かるかどうかで動いているように思えるかもしれませんが、私は期間損益というより、その儲けが株主資本として積み上がっていくことへの期待値なのだと考えています。

 現在の株主資本と、将来の株主資本であるところの株価、時価総額を比較することによって期待値が分かる。だからヒストリカルに株価純資産倍率(PBR)を見て、それが過去最低とかになったら、ちょっと考えなきゃいけないと思う。「これ、本当にこんなに安くていいんだっけ」と。

あ、この視点から考えても、投資家は「現在」ではなくて「将来」を見るべき、という話になるんですね。

居林:株価は……あえて株価はと言いますけど、株価というのは期待値でできている、現状ではなく、あくまで期待値なんです。FCFに対して言われたように、将来いくらになるかってどうやったら分かるんだと。合理性があるといいましたが、もちろん推定値でしかない。だから外れるかもしれない。

 なので、どういうふうにシナリオを書くかは別にして、どう考えるにしても推定値だからリスクはあります。でも、五分五分じゃないときがある。

勝ち負けが五分五分なら……それは賭博というやつですかね。

居林:私たちがやっているのはそうじゃない。少なくとも6:4、できれば7:3で勝ちたい。そうなるためには、市場が間違えているところに気づく視点と分析が必要です。ブラックジャックで言うと、「キングはもう3枚出ているよね」とカウントしているのと似ているのかな。「これは来るでしょう」というときがあるわけですよ。博打で例えるのがいいかどうかは分かりませんが(笑)。

なるほど。