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居林:あのときに10年以上、15年の投資ホライズンを持っている人はソニーを買えたわけです。私もそうでした。当時「ソニーを買うんだ」と叫んで、1年たっても上がらず、5年たっても上がらず、7年たっても上がりませんでしたが、8年後から上がり始めています。ソニーの底力という未来価値を信じていたから投資判断ができたわけです。

投資期間が例えば10年、という人だったら未来価値への投資が可能になる。

居林:はい、これはデイリーで取引される人には関係のない話なんです。ただ、もしNISAをこれからやろうかなとか、個別銘柄で資産形成していこうかなという方がいらっしゃるとすれば、「株式には将来価値があり、それは株価の1カ月、2カ月の変動とはほとんど関係ありません」ということは分かっていただきたい。長く持つ株と決めたら、それは短期の会計要因でも、株価変動でもなく、将来価値を自分で決め打ちにするしかない。それはどうやるかというのは、ご自分で考えるしかないと思います。

ちょっと話を戻しますけど、今のお話って、持つべき期間の軸というのは投資家それぞれ任意でよいということになるのでしょうか。

居林:もちろん任意です。それもその方の考え方です、スタイルです。

孫さんの場合だったらどれくらいの期間なんでしょう。

居林:孫さんは会社そのものを買うじゃないですか。だから、会社をコントロールできるんですよ。株価は基本的に他人が決めるもの。ところが孫さんの場合は違うんですよ。会社が決めにいけるんです。企業バリューを上げられるから。

計算で出した現在価値って信じていいの?

でもそこで疑問もあります。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下SVF)が出資している企業はウィーワークを含めて、未公開のものが大半ですよね。そのバリューが上がった下がったの評価が、客観的で適正だと、判断できる根拠はなんでしょう。

居林:ご指摘のように、SBの持っている資産のほとんどが未上場株で、未上場株は自分であれ、他人であれ、誰かが新たに出資したら、それが新しい評価額として評価されます。だから、Aさんが買ってくれて、それをBさんが買ってくれて、またAさんが買ってくれて、Bさんが買ってくれてとやると、なんだかお手盛りで価格を付けているように見えます。もちろんそれは正しくないと思います。

 今回孫さんは「我々が考える企業価値とはフリーキャッシュフロー(FCF)です」と宣言した。FCFー×倍率=企業価値(時価総額)で、ファンドの企業群が持っているFCFの予測はこうです、倍率は(類似業種から推定すると)こうです、と出してきたわけです。

投資している企業群が将来稼ぎ出すであろう、自由に使えるお金であるFCFと、それが市場で株式として評価される倍率、それを現在価値に割り引くとこういう数字になる、と。

居林:そうですね。やり方としては正攻法になったように思います。ただし、本当にその通りに業績が改善するのかどうかは別問題ですが。

そうですよね。別問題です。そこでもう1つ。FCFや、その現在価値へのディスカウント(割引)の話を理解したいと悪戦苦闘すると「どこまでいっても予想は予想だよね」という「トカトントン」が聞こえてくるんです。所詮、予想でしかない話で、1兆円とか8000億円とか、正気を疑うような金額に対する計算を行って、式の理屈は正しいとしても、合理的だと信じることに、どうしても抵抗が残るんですが。

居林:それについてはもう何十年も考えているんです、この問題が腑に落ちるには専門的な長期間の学習はどうしても必要で、例え話では理解が難しい。少なくとも、自分自身で納得できる「簡単なご説明」のやり方は、まだ思いついていません。

そうおっしゃるので、私も一度は諦めたのですが……。

居林:計算式の説明ではなく、禅問答みたいになってもよろしければお話しできることはありますよ。企業価値をそのものずばりで予想するのは難しいですが、シナリオを描いて下値のメドを考えることはできる、と思うのです。

ぜひ聞かせてください。