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孫さんは何を言いたかったのか

居林:でも、空いた部屋はまた誰か借り手を見つければいい。改修費だって賃料を値上げするなりして吸収すればいいわけです。たまたまその期に、空き部屋が生じ、コストもかかったからといって、そのマンションの不動産としての価値そのものがマイナスになっちゃった、ということとイコールではない。

なるほど。ついそう考えてしまいそうですけれど。

居林:空き部屋、と考えると「不動産としての価値」が損なわれたように思っちゃうかもしれませんね。では、例えば台風で木が倒れてきて窓ガラスをぶち破ってしまったとか、飼っている猫が壁をひっかいちゃって壁紙を替えなきゃいけないかもしれないとか、そんな場合ならどうでしょう。

あ、これだと「一時的な費用」だと直感的に思えます。

居林:そのときの期間損益にはあきらかにマイナスになるんです。だけどそれは将来の不動産価値、不動産としてのフューチャーバリュー、これから先の投資期間の不動産の価値、には影響を与えないですよね。しょうがないねと窓ガラスを直し、壁紙を貼り替え、費用を1回計上したら、その後は再度、不動産としての価値を生み続けると期待しますよね。

なるほど。空き部屋だって、最寄り駅が閉鎖になるとか、洪水が起こるとかの、「物件の価値そのものが下がる」事態が発生したわけじゃないんだったら、いずれは埋まりそうですね。

居林:孫さんの言いたかったことはそういうことだと思うんですよ。孫さんという天才の頭の中は、もちろん分かりません。あくまで私なりの理解では、「投資にとって、過去の期間損益と将来の未来価値は別なんだ」と、説明会で繰り返しおっしゃっているように思えます。

未来の価値。

居林:不動産なら不動産、企業なら企業、何でもいいのです。そのときまでの価値と、そこからレスト・オブ・ライフ(Rest of Life)。人間もそうですね、きっと。

ですね。

未来の価値の当てっこ

居林:毎月のお給料と持っている資産の額だったら、歳を経ている人の方が多いかもしれない。一方で未来価値は、若い人の方が高いかもしれませんね。

 その未来価値、将来の価値を決めるのが、未来にその企業が稼ぎ出す「フリーキャッシュフロー(FCF)」なんだ、と孫さんは言っている。これから先の、未来のフリーキャッシュフロー。それまで計上したロスとか投下資本とかは、実は未来価値には関係がないんだと。もう看破しているわけですね。「なるほど」と、私は大きく膝を打ちました。

それは、読者の方のような、言い方は難しいですが一般的な投資家でも同じ考え方が使えるんですか。未公開企業ではなく、公開企業に投資する立場の。

居林:この話はもちろん相場展望に展開できるんです、今からその話をしますね。さて、ということは、株式というのは企業の将来価値の当てっこであると。

なるほど。

居林:それは株価であり、もっと具体的に言うと市場時価総額なわけですね。市場時価総額は利益の関数である。もっと言うと、利益「予想」の関数であると私はずっと申し上げてきました。そういう意味でも、株価は将来価値を見ていると言うことができます。

 例えば今期、来期も赤字だという業績の会社って、企業価値はゼロなのか、マイナスなのか。そんなはずはないですよね。その会社がいつか、10年後なら10年後、このぐらいで評価されるんだろうなと思う銘柄があったとするじゃないですか。そうしたらその価格までは買ってあげていい、という判断が成り立つのではないでしょうか。

昔、プリウスが米国で事故を起こしたときのトヨタ、ソニーショックのときのソニーみたいに、「台風で窓が割れた」ことで株価が急落した例もありますね。