居林:それにしても「安全資産が買われすぎ」「リスク資産が売られすぎ」ではないか。そこで「長期間、高配当を続けている企業ならば、ある程度将来も期待していいのではないか」という仮説が出てきます。

そこが「質」ってことですか。長期間と言いますと?

「過去15年間減配していない、あるいは減配1度のみ」企業は何社?

居林:「過去15年間減配していない、あるいは1度の減配のみ」で考えてみました。この期間には世界金融危機(2008年)、東日本大震災(2011年)という大事件が起こっています。これを乗り越えた企業の経営には、減配のリスクが少ないだろう、というわけです。

すなわち配当の質が高いだろうと。

居林:さらにそこから、株価が相対的に安い=配当利回りが高い、かつ、将来の予想成長率が高い、そういう企業を探しました。

そんな企業があるんですね、いくつあったんでしょうか。

居林:57社あったんです。具体的には8月にUBSのリポートとして出させていただきました。そこから引用しますと「配当の質が高い企業は、継続的に自社の利益見通しに対する自信を示し、株主への高いコミットメントを有していると我々は考えている。さらに、過去15年間継続した配当方針を貫いてきた企業は、現在の配当方針を今後も維持したいと考えるだろう」というわけです。

面白い、これはどこから思いつかれたのですか。

居林:「安全資産が買われ過ぎ」「リスク資産が売られ過ぎ」だと常々思っていまして、その証拠を探していたときに、そうだ、「配当貴族」ってご存じですか。

初耳です。

居林:米国の言葉なんですが、25年配当を落としていない、シェブロンとかAT&Tとか、そういう会社のことです。そういう会社を集めた「配当貴族指数」というのがありまして、それを見ていると、世界中で「“配当”が売られまくっている」ことが分かります。要するに市場から評価されていない。

つまり、配当利回りの高さが株価につながっていない。

居林:そう。そんなばかなと思うのですが、安定高配当銘柄は売り一色なんです。例えばシェブロンは今4~5%の配当で、年間時価総額5%の自社株買い戻しをやっているので、総還元性向が約10%あるんですよ。にもかかわらず、株価に反映されてこない。

 本当か、だったらこれはおかしい。日本でも、配当貴族的なスクリーニングをやると面白いんじゃないですかということで、このリポートを書いてみたわけです。

そもそも高配当を維持できてるんだから、逆境下でも一定以上の利益をたたき出している企業ばかりということになりますね。

居林:その通りです。配当の質が高い企業群のパフォーマンスは、平均値を大幅に上回っていますが、それだけではなく、逆境下での株価の下落率も低い。EPS(1株当たり利益)の伸び、キャッシュフローも比較的安定している。だから配当を維持できる。そもそも、日本企業は株主への還元策として、自社株買いよりも配当を好む傾向があります。2018年で日米を比較すると、株主還元額に占める配当の比率は72%、米国は37%と日本のほぼ半分です。自社株買いは一過性、配当は長期的な還元策、と見ているからでしょう。

でも、割安で放置されている銘柄がある……これって、もしかして典型的な「マーケットの間違い」ということでは。

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