すみません、タイトルは私の責任です。サブタイトルの「株価の『下値』から考える企業の価値」の法が、記事が訴えている内容により近いのですが、居林さんのお話にあった「『内部留保を積み上げている』ということと、『投資を行っているかどうか』には直接の関係はありません」という、当たり前と言えば当たり前の指摘が、もっと世の中に知られるべきだと考えて、あえてタイトルに取らせていただきました。

居林:いやいや、コメント欄も読ませていただいて、私もあれから「企業価値について、もっと分かりやすい言い方、理解しやすい考え方はないのだろうか」と、さんざん考えてきたのですが、分かりやすくお伝えするのは本当に難しいと思った次第です。片方を立てるともう片方が立たないというような状態になって。

 M&Aで使われる企業価値の計算の仕方を理解すると、株式市場で成立している企業価値(市場時価総額)の理解にもつながる、というのがもともとのアイデアだったのです。一番身近な入り口がPBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)とROE(Return on Equity:自己資本利益率)だと思ったのですが、なかなかそれだけでは先に進まず、では、あれもこれも説明しよう、とすると、整理が難しくなります。株式市場に参加しているアナリストとして、相場観をどう考えているのか、というこのコラムのもともとの主題に戻していきたいと思います。

配当の「質」を考えてみよう

居林:そこで、今回はちょっと違った観点(もちろん底ではつながっているのですが)で、企業の価値を考えてみたいと思います。「配当の質」です。

質ですか。株式の配当に「いい・悪い」があるんですか?

居林:そこを考えてみませんかということです。

 まず大前提ですが、投資として株式を保有する理由には、値上がり(キャピタルゲイン)と、もう一つ、配当があるわけですよね。そして日本株の配当利回り(1株当たりの配当÷株価×100)は、復調前の8月時点では実に平均で2.6%(東証一部)と、非常に高い水準にあったわけです。

2.6%? 国債がマイナス金利のご時世に、考えてみるとすごい。

居林:高い配当利回りがあっても株価が上がらないというのは、投資家が何らかのリスクを織り込んでいるから、と考えられます。

どんなリスクでしょうか。

居林:この場合のリスクとは2つあって、配当が予想通りに支払われないことと、株価がさらに下落することです。

 「世界景気の動向が、米中貿易摩擦もあって読みにくい今、現在の“予想”配当利回りは高くても、本当は分からない、ましてや将来の配当はもっと分からない」となっているわけです。一方でマイナス金利の国債が買われるのは、本気でキャピタルゲイン狙いで買いにいっている人がいるのかはよく分かりませんけれど、安全資産(もしくはそう思われている)だからでしょう。

 さて、この現状をどう考えたらよいのか? 世界は再度金融緩和に向かっています。マイナス金利が長引く公算が大きいわけです。ここでも米中貿易問題以外の視点が出てきます。

なるほど。

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