居林:積み上がる純資産のすべてが現預金で流動資産になっている、というのはさすがにどうかと思いますけれど、ここ2、3年は、現預金と売上高の比率は変わっていないんです。売り上げが増え、商売が大きくなれば、手元に現預金を置く必要が増すのも事実ですから、これもおかしなこととは言えない。

「個人がお金を使わない、だから社会にお金が回らない」のと、結局は同じことだろうと思っていましたが……。

居林:はい、個人は「使うか、貯めるか」の事実上二択ですからそれは正しいんです。企業会計はそこに「投資」が入ります。「内部留保を積み上げている」ということと、「投資を行っているかどうか」には直接の関係はありません。

 違いは「自分が稼いだお金で投資しているかどうか」だけです。ついでに言えば「資金を借り入れて投資を行うかどうか」は、まさしく経営判断で、企業モラルの話とは別だと思います。

 もちろん「景気回復のため、けちけちしないでお金は全部再投資しろ、現預金に寝かせるな」という期待というか、そうなったらいいのに、という思いは世の中に存在してもおかしくはないですね。でも、それを法律や税制で強制するのは理屈に合わないように思います。

ううむ。自分自身の生活感覚と、企業会計との違いをつい見失ってしまいます。

投資家は「消費者」であってはいけない

居林:それは実は投資家にとって重要な警句です。投資家も実生活を送っているわけですから、つい、消費者目線で物事を考えてしまう。内部留保と言えば現預金、と直結してしまったりもする。増税、と言われたら「生活が苦しくなる、財布のひもを締めなきゃ」と思う。でも、投資家は、消費者の心理を理解することは必要ですが、消費者の思考そのままでもいけないと思います。

 この先、G20、総選挙、消費税と、株価にとってはどうも悪い影響が出そうなイベントが続きます。9月までは耐える展開でしょう。で、耐えるには心の支えが必要です。そこで、下値は限られている、なぜならば、という今回の話を思い出してください。

バッドニュースでうろたえるな、仮に消費税の影響で株価が沈んだとしても、PBR1倍を割り込む理屈はない、と。

居林:そう。目先で損失が出ると「こんなにロスが出てはもうやっていられない」と、自分から降りてしまう人がいるんですが、これは投資判断の誤りというより、「投資金額がその投資家にとっては大きすぎた」ことが理由だったりします。一度に投資するより、何回かに分けて、下がったら買いに出る、くらいがよいです。一発で大きく投資して、大きくやられると呆然として、勝負を投げてしまう。こういうことになるのは、投資の単位を間違えている可能性が高いです。

 下値はどこかにあって市場は意識している。これを忘れて投げてはいけないと思います。まあ、消費税が終わるまでは海外投資家は帰ってこないでしょう。10~12月の決算が見えてくるまでは我慢時だと思っています。

 投資は長い間続けるものだと思います。昔このコラムでも申し上げた、投資哲学を持って続けて行きましょう。

胃薬もでしたね。

居林:そう。哲学と胃薬です(笑)。

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