居林:貿易摩擦は大きな問題だし、消費税もあるし、日本には自前で国の経済をブーストする力がなくなってきた、と、悲観論は多々あります。私もアグリーしてもいいと思います。でも、もう下値はない。一方で、先回お話しした理由で、上値はまだあるかもしれないですよ、だから頑張ろうよ、と。

株価は「BPS(1株当たり純資産)」を底値にして、業績の関数である期待値が載ったもの、という言い方もできるわけですね。いまはその期待値が色々な悪材料で剥げ落ちている。そして今後も、こんな状況が続きそう。

居林:業績の関数、といいつつ、その業績先行きが見えにくくなっている中で、投資家の不安も大きくなるわけです。一方で、「下値はPBRから予測がつく」と思っていると、ある意味安心材料になるじゃないですか。業績の安定、回復がいつになるかについてはなかなか読み切れないし、「このまま持っていて大丈夫かな」と思うのも無理はありません。そういうときは、PL(損益計算書)だけじゃなくて、BSも見ましょうね。そしてハラを括りましょうね。そういうお話です。

この考え方は、昔からあるものなのですか?

居林:株価の期待値の説明について、金融界はずっとPER(Price Earnings Ratio、株価収益率)を語っていましたね。でも、結局はPL、業績の先行き次第なのでモデルが作りにくい。いまの株価が、将来の収益の伸び率を反映するのをどういう計算式で表せばいいのか、理論が出ては消え、出ては消えてきました。

「CAPM(キャップエム)」とか、ありましたね。バブル期に証券部にいたのでいくつか見聞きした記憶があります。

居林:ところが、20世紀末にこのBPSを使ったこのモデルが出てきた。「残余利益モデル」とか「オルソンモデル」というんですが、「そうか、資産価値か」と、みんな、目が覚めたような衝撃を受けたものです。

それはそうでしょう。顎が外れそうなくらい分かりやすいです。ところで……。

居林:はい。

BPSが拡大している件ですが、これって、巷の「企業は内部留保をため込んで、投資や給与に回さず、景気回復に寄与しておらん。けしからん」という、不況=企業の責任、という話につながってません?

居林:Yさん、証券部にいらっしゃったのですから、内部留保は利益準備金や利益剰余金とされますが、これはBSの左側に載る「現預金」の残高とは直接関係がない、ことはお分かりですよね?

内部留保を貯め込む企業は経済に貢献していない??

居林:つまり、内部留保の大きな会社は、現金をため込んでいる会社、とは限らない。言うまでもありませんが、利益準備金、剰余金は「その年に稼いだ利益で、役員報酬や配当などの外部流出を除いた額」で、累積されるから膨らんでいきますが、それらは左側の資産、機械や土地建物などに替わっている。つまり投資されているわけです。

 企業は利益を上げ、株主に配分し、税金を払い、残った分で投資を行っている。仮にキャッシュフロー(CF)内の投資だったとしても、外部にお金を確実に回している。

あっ、「CF内の投資でも、外部におカネが回っている」というのは、確かに見過ごしやすいポイントですね。減価償却分の投資を行う、というだけでも、経済を回すことに貢献しているわけか。

居林:そうです。

でも「内部留保をためこむ企業は守銭奴だ」とか麻生太郎さんが言い出したり、内部留保に課税しようと言い出した政党があったりしたくらいだから、批判する側は「BSの左側の現預金を指して言っている」……んじゃないんでしょうか?

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