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え。あ、もしかして「株価がBPSと等しくなるところ」ってことですか。

居林:ご名答。「BPSと株価が等しい」、言い換えれば「PBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)が1倍」が下値の限界線です。株主として受け取れる理論上の最低価値、ということになります(※)。

(※簡略化のために、株式の資本コストという部分をあえて省略しています。企業のROEが株主資本と同じかそれを上回っている、という前提でお考えください) 

 もちろん、業績やキャッシュフローの急激な変動、あるいはBSの内容に虚偽があったりすれば別ですが、普通に考えてBPSは「資産から負債を払った残りを株式数で割った解散価値」ですから、この値段を株価が下回ることは、企業というより、市場が異常な状況に陥っているのだ、と考えたほうがいい。

グラフでは実際に、2008~12年は株価がBPSを割り込んでいますね。

居林:はい、11年末から12年初のあたりはPBRで0.8倍まで落ち込みました。リーマン・ショックの傷が癒えないうちから、東日本大震災、タイ大水害、そして超円高。日本企業の業績はぼろぼろになり、悲観論が地を覆いましたが、「株価は戻る。買いだ。日経平均は1万円台に乗る」と一人で騒いでいた人もいました。

居林さんですね。

居林:その通りです。と、2012年12月3日発行の2013年徹底予測号に色々書かせていただきました。昔話はさておいて、PBRが1倍を割る株価がいつまでも続いたり、下げ続けたりすることはない、という確信から、市場は必ず早晩反転すると吼えてきたわけです。

PBR1倍は「投資家はこの企業に全く期待を抱いていない」ということ

なるほど。これは単純かつ分かりやすいです。

居林:そして、PBRが1倍、BPSと株価が同じ、1株当たり解散価値イコール株価、ということは、「株主(投資家)は、将来の企業価値の増分、つまりその会社がこれから生み出す利益の現在価値をまったく期待していない」ということを意味しているわけです。

いますぐ解散しても同じ、と思っているわけだから、将来への期待値ゼロ。

居林:そうですね。その企業に対する、投資家の将来への期待値がゼロであることが見える。つまりPBR(と、その元になるBPS)は、株式への投資家の期待値を“見える化”する、とも言える。

 まとめておきますと、「株式の価値 = 帳簿上の純資産 (株主資本) + 将来企業が作り出す価値」と分解でき、そして、将来企業が作り出すであろう価値とは、投資家の企業に対する期待値だろう、と考えられるわけです。

その期待値は、グラフで言うとどこになりますか。

居林:株価の線とBPSの乖離幅が期待値、と考えることができますよね。

なるほど……。

居林:ちなみに、現状の日経平均2万1000円前後は、ほぼBPSに等しい水準です。PBR1倍から5%も離れていませんので「もう下値に近い」と判断しているわけです。