居林:今、中国は中央銀行から私企業に融資が流れるように金融のポンプを一生懸命押している状態です。下のグラフの濃い茶色の線が中国の最も基本的な資金の流れであるM1が前年同期比でどれほど伸びたのかを見ているグラフです。直近0%まで落ち込みましたが、そこから切り替えしの様相を見せています。融資が増加すれば経済が活性化して中国の景気先行指数であるPMIがそのあと上昇する、という傾向もグラフから読み取れます。

出所:Bloomberg、UBS
出所:Bloomberg、UBS
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居林:ということで、まとめてみますと「もしかしてこのまま上がり続けたらいったん相場から降りたほうがいいのか」と一瞬思いましたが、予期せぬ形で米中貿易摩擦再燃となりましたので、私はこのまま強気のポジションを取り続けます。

 米中貿易摩擦を意識しすぎた悲観論が出ていますが、昨年末の「貿易摩擦=中国初の景気後退」という刷り込みが効きすぎている。しかも、これは政治問題がきっかけで、より大きな原因は中国の過剰生産だと判断しています。そして、半導体市場の成長力、直近の受注、在庫、マネジメントの意識などから、その影響もそろそろ底を打ったように見える。

 ということで、景気は戻り、企業収益も戻り、中国景気も折れない、と見ます。20年3月期の通期の業績予想は+3%と大したことはありませんが、10~12月期の四半期だけを見れば企業収益は20%増益まで瞬間風速は回復すると予想しています(純利益ベース、TOPIX500、金融・ソフトバンクを除く)。

追加関税対象拡大の影響は?

 なるほど。最後に一つ。米国通商代表部(USTR)は5月13日に、新たに対中輸入額3000億ドル相当の追加関税対象品目リスト案(リスト4)を発表し、最大で25%の追加関税を課す、としました。これで事実上、ほぼすべての中国原産品が25%関税の対象となったといわれていますが……。

居林:このインパクトはおそらく皆さんが思っているより小さいと思います。まず、スマホなどが追加関税の対象に入ってくるわけですが、「だったら、あなたスマホ買わないんですか、中国以外では今のところ作れませんよ」という話で、25%高かろうが買いたい人は買うしかありません。世界の需要がなくなるわけではなく、一時的に買い控えが起きるということだと思います。

 それはそうですが……。

居林:米国にとって中国は、最大の輸入国とはいえ、その比率は輸入額の3兆1228億ドル(JETRO調べ、2018年通関ベース)のうち、中国からの分は3233億ドルです(中国税関総署調べ)。ということは1割ちょっとの分が、25%値上げになる可能性がある、ということですね。

 となると、全体で考えれば2.5%の値上げ? あれ?

居林:関税の上昇は、消費税の引き上げみたいな効果になるんだと思います。景気が弱かった日本では、3%上げるだけでも大変でしたけれど、駆け込み需要が出て、そこから下がって、1年経つと平準化する。関税引き上げへのリアクションもそんなところだろうと見ています。

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