居林:じゃなくて、ではないですよ。もちろんそれもある。けれど、仮にトランプ大統領と習近平主席が仲良くやっていたとしても、2017年からの中国の半導体や電気自動車などの分野への過剰投資は、いずれ今日と同じような事態を引き起こしただろう、ということです。

 はあ……。「半導体は永遠に需要が伸びる“スーパーサイクル”に入った」なんて話も出ていましたが。

居林:考えてみれば自分自身がこちらの連載で「そもそも中国は供給過剰ですよ」と、17年12月に言ってました(「台風逸れて、2018年も上天気?」)ね。中国のものすごい投資が引っ張った需要であって、スーパーサイクルなんて、ないんです。

 でもみんな、米中貿易摩擦という大きなタイトルに「そうだよねえ」と納得してしまった。

居林:さきほども言いましたが、18年にそれで1回株価が落ち、景気が悪くなったことが大きいです。「またあれが」とつい考えますが、過去のトレンドは未来には関係ないと思ったほうがいいのではないでしょうか。

 過去のトレンドといえば、株式の世界には、「チャート分析」というのもありますが……あ、この話はやめましょう。

居林:本題に戻しますと、中国は半導体を中心とする過剰投資とその反動で現在景気が落ちている。米中貿易摩擦はきっかけで、原因はオーバーサプライの反動。だから日本企業も受注が落ちていた。

 ところで半導体は消費財です。生産設備は資本財ですよね。何かを作るために作る。生産が伸びなければいらない。ゆえに今は受注調整中。そして半導体の需要は時間がたてば伸びは戻る。今は需要が追いつくのを待っている。そしてどうやら、1~3月を底に追いついてきた兆しがある。これで景気悪化も現状も、企業業績予測が変わっていない理由も説明できます。

 なるほど……。

「貿易戦争の影響」は大きすぎる言葉

居林:米中貿易摩擦は確かに大きな問題です。でも、枕詞に置いて物事を考えると、「これが解決しないと株価も景気も戻らない」、となってしまいます。

 確かに。言葉が大きすぎて、だいたいの事象を「米中貿易摩擦があるから」で説明できて、思考が止まってしまう。そうなると、「トランプ大統領がこんな発言をした」「米国政府の主導権は誰それが握っている」という、政治家や政府要人の動向に目が行きますね。まさに政治イベント。

居林:政治の人間模様は読み物としては実に面白いですからね。正確に言えば、米中貿易問題は、政治イベントでもあり、もちろん経済に大きな影響がある、経済イベントでもあるわけです。でも、あっという間にちゃぶ台返しも起こりえる政府間のやりとりの先行きを、合理性を持って読むのはおそらく政治家本人たちにだって無理でしょう。つまり「誰にも分からない」。ゆえに「考えても見えない」。だから、数字で見える指標で考えましょう、ということだと思います。

 大事なのは、ならばどんな先行指標を見ていれば、地べたの動きが分かるかという点です。景気サイクル、貿易問題、景気の先行きを考えて、「この辺がこう変わっているのではないか」と当たりを付けて調べてみる。

 中国の景気指標としてはどんなものがありますか。

居林:先ほどの建機の稼働状況もその一つです。そして企業収益を見るなら分かりやすいのは、やはりマネーサプライですね。マネーサプライが増えれば、融資が増え、企業収益が戻る、というのがセオリーです。

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