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 ちょっとご無沙汰している間に、経済の話題と言えば上から下まで「米中経済摩擦」一色です。トランプ米大統領と習近平(ジー・ジンピン)中国国家主席のパワーゲームが落ち着かない限り、世界経済の先行きは見えない、今、この2人は何を考えているのか。そこを読み切らんとする記事が、経済メディアにあふれています。

居林:そうですね。

 でも、当欄はちょっと違うわけですよね。

居林:なぜでしょう。

 「政治イベントで株価が動いても、それは一過性。長期間引きずる金融イベントと冷静に区別し、もし政治イベントで市場がパニックになったら、胃薬を飲んで買いに出る」のが、投資家の取るべき態度だ……と居林さんから伺いましたので。たとえば2018年7月に、こんな記事を載せましたよね(「市場は米中貿易摩擦より、米金利の上昇を注視」)。

居林:なるほど。では逆に質問ですが、ご自身で「これは政治イベントだ」と判断された理由はなんですか?

「買い」の姿勢で大丈夫か

 え? えっと、もしかして今回は違うんですか?

居林:国際政治のニュースで一喜一憂したり、パニックに陥らないのはいいことですが、「政治家の発言だから政治イベント」と決めつけて安心してしまうのも、この連載で申し上げたい本意とは異なります。もしかしたら、米中貿易問題に隠れて他の悪材料が、たとえば新興国から資金が逃避していて思わぬ混乱を招く、なんていうことも十分あり得ますよね。間違えたと思ったら、昔言ったことにとらわれずに「間違えました、変更!」というのも運用の現場では必要だと思います。 

 なるほど……。

居林:まあ、こういうコラムを書いている立場だと「はっきり自信を持っていました、前言撤回など致しません」と断言するほうがそれらしいのでしょうが、正直に言うと私自身もゴールデンウィーク前に「このまままっすぐ上がるのは出来すぎかな?」と考え込んでいました。

 ええっ。慎重ですね。

居林:1~3月期の企業決算は今年の企業業績の方向性を決める正念場で、これを間違うと大変ですから。2018年末は、企業業績に対して株価は大きく割安で、これはさきほどおっしゃった、典型的な「米中貿易摩擦という政治イベントに対するパニック」で、市場が“間違えて”いたわけです。企業業績は戻る。そう判断して、買いを推奨しました。

 そしてご存じの通り、年末からこの4~5カ月ほどは米中両国が貿易問題を解決しようと努力してきた。株式市場はそれを好感して上昇に転じてきたわけです。

 しかし、景気指標になるマクロの数字は、実は米国を筆頭に減速の兆候が見られます。米国の景気のサイクルがピークアウトしつつある兆候が、下のグラフにあるISMやPMI指数などで幾つか出てきた。こうなると、「昨年10~12月の業績が底だった」という判断を、1~3月期の決算で確認できなかったら、市場は持たないかもしれないと思ったわけです。

出所:Bloomberg、UBS

※ISM=Institute for Supply Management、「(米国の)製造業景気指数」。PMI=Purchasing Manager's Index、「購買担当者景気指数」。メーカー、サービス業の購買担当者に対して、新規受注、生産高や受注残、価格、雇用、購買数量などを調査し、そこから導き出される景況感を示す指数。どちらもGDPなどより速報性が高い。

 景気変動の中心は、やはり中国ですか。