居林:投資家の反応も業績予想もすべて、時間の変化とともに変わっていきます。その変わっていく方向と理由を押さえておくと投資判断に役立つ、そう私は信じています。
たとえば昨年末に、「米中貿易問題について、株式市場は過剰に感応しすぎている」と申し上げたのも、業績予想に対して株価が下落しすぎていることが根拠だったわけですが、読者の方の中には、もともと私が市場コンセンサスの業績予想が高すぎると懐疑的だったので、どうして急に強気になったのが疑問に思われた方もいらっしゃると思います。
昨年11月時点の市場コンセンサス業績予想というのは私の見方では「楽観的過ぎて下方修正される」と思っていました。ところが、12月に入るとその下方修正を見込んだ私の保守的な業績予想を使っても、なお割安な位置に株価が落ち込みました。それで、「大漁旗」となったわけです。
そして、今年2月には業績の下方修正が相次いでいることを見て、株式相場的にはあく抜けして上値が期待できると考え、強気継続となっています。
「みんなの予想」の正誤ではなく、どちら向きかを知ることが大事
居林:つまり、アナリストの業績予想を重ね合わせれば、世の中の代表的な予想者が業績の先行きをどう考えているのかを知ることができる。しかも、ヒストリカルで追いかけているから、予想が上方修正に動いているのか、下げるほうに動いているのかもわかる。
問題は「参加者の総意」の方向を知ることなんですね。それと自分の判断が合っているか否かではなく。
居林:「そうか、みんなそう思うのか」が分かったところで、株価のグラフと重ねてみる。株価判断に「使えそうかな? うん、使えそうじゃないか」というのが、いつもお見せしているグラフなのです。上に行きすぎが、下に行きすぎか、がわかるわけです。あ、ちなみに、来期利益の「伸び率」は意識しないでください。ほうっておいてOKです。
え、なぜですか?
居林:たとえば、「来期は今期比で7%増益予想です」と。でも、今期の予想が下がって、来期予想も下がれば、そのまま「7%増益です」と言い続けられますよね。でも、実額は下がっていく。
そうか、今期予想も修正が入るんだ。
居林:そういうことです。ヒストリカルで見ると予想時点の増減率なんてあまり意味がありません。絶対値を押さえておいて、どのくらい確度の高い数字かを判断するほうが先だと思います。
居林:今までの話を理解して、このグラフを見るとどうですか。
なるほど……。業績予想の修正の波を渡り歩くように株価の線が動いていきますね。これを見ると、このところずっと、アナリストの予想は上にオーバーシュートして始まるんですね。
居林:そうですね、アナリストはほぼ必ず増益予想を出す。なぜかは聞かないでくださいね。いろんな理由があると思いますが、GDPのマイナス予想は前もって出ないのと同じではないでしょうかね。20年3月期予想は……私の集計では8%増益、少し高いかなと思いますが、期初は10%内外の増益で予想されるのが通例なのでこのくらいでしょう。でも、まだ気にしないでいい時期です。まして、21年3月期は参考程度でいいと思います。
そもそも、どうして予想は外れるんでしょうか。
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