あっ、株価は業績予想の関数なんですよね。だったら、決算が出る4月、5月には、「予想値と実際の株価が一致する、予想の答え合わせができる」とかですか?

居林:違います。見事な思い込みによる勘違いを披露していただきました。

ぐっ。

居林:勘違いは業績「予想」と「実績」の混同です。株価は「業績予想の関数」と申し上げても、やはりどうしても「業績の関数」という理解をされている方が意外に多いです。

 いま減益決算予想や発表がぞろぞろメディアに出ていますが(この状況についての私の理解は前回参照です)、「だから株価が下がる」と思うのは、素直すぎると思います。期末の決算発表の時点で市場が見ているのは、終わってしまった前期ではなくって、次の今期、来期以降の利益がどうなるか、なのです。

決算「発表」は株価に影響しない?!

……まさか「決算発表は株価には影響しない」ってことですか?

居林:発表日は影響を受けるでしょう。企業によってはしばらくそれが残ることも多い。それは、実績の業績が将来予想に変化を与えるからです。将来の業績には関係がないような数字でも、短期間は株価が反応することも多いです。でも、もしそれが一過性のものであれば、さほど経たないうちに「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないですが、「あまり気にしなくてもよさそうだ」として忘れていきます。株価は年間3割くらいの上下のブレを持ちつつ、基本的に「いつも」12カ月先を見ている。私はそう思っています。つまり、業績予想については、二つの変化が毎日起きているのです。一つ目は株式市場が見ている「12カ月先業績予想」というのが1日経てば、1日先の未来に移行すること、そして二つ目は、今期、来期といった特定の決算期のアナリストの業績予想が変わってゆくことです。

 そして昨年、18年3月時点での、19年3月期のアナリストの業績予想はどうだったかといえば、純利益合計額は40兆円で絶好調と見られていた。ちなみに私は「減益になる」と叫んでいた少数派ですが。徐々に予想の下方修正が行われて、現時点では30数兆円に落ち込んで終わりそうです。

だったら、いま株価も引きずられて下がりそうですが、そうでもない。

居林:そうなんです。そこが今回の勘所で、なぜかといえば、時間軸が19年3月期を進むにつれて、20年3月期の予想が占める比率がだんだん上がっていくからですね。次期の予想を織り込み始めるので、19年3月期が不調であっても、なかなか株価は下がらない。

1年前から振り返ると好調の予想でスタートして、でもやっぱりダメそうだと思って沈み始め、後半に入ると、終わった期のことはみな忘れて……。

居林:株価は未来予想でできていますからね。

そのうちに20年を織り込んで上がっていく、ということですか。

居林:そうだと思います。だから、実績と予想は永遠に交わりません。仮に、12カ月先のアナリストの予想が、まったく現状と同じであればもちろん別ですが。

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