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居林:私が見るに、企業収益が上がる・下がるには大きく3つ理由があります。下がるほうで言うと、売り上げが下がる、コストが上がる、バランスシート(BS)が毀損する、ですね。

 まず売り上げの減少。これはハイテク分野でのアップル向けの不振、中国市場不振。文句なく理解できます。売り上げが落ちると工場の稼働率も落ちる。在庫積み上げを防ぐためにその調整もやっているので、生産性も悪化します。

 コスト増はどうでしょう。石油価格は下がりました、鉄も下がりました。上がっている費目は、人件費、研究開発費、設備投資です。

ということは、前向きな投資は削っていない?

居林:そうです。主に中国の景気鈍化による売り上げの減少と、そして攻めの投資による影響が「一度に出てきている」ために、予想よりも大きく減益になっている姿が見えてきます。

 バランスシートも見ておきます。BSにある積んでおける在庫や既存の設備を、景気悪化を受けて評価減している企業も多いんです。電子部品メーカー、日本電産はそのいい例です。

「売り上げが元に戻ったら利益倍増だ」

 例えば、日本電産の決算発表説明会で永守会長は、社内に「設備投資は止めたらあかんよ、ちゃんとやれ、必ず(注文が)来る。他の所が供給できないところを全部うちが取るんや」とはっぱをかけているとおっしゃっていました。「来季Q2くらいまで中国の不況を覚悟しているが、反転する兆しも見えてきた。足元悲観、将来楽観、リーマンショック、ギリシャショックなどのときもそうだったように、売り上げが元に戻ったら利益倍増だ」とも(この発言はこちらで→「IR説明会音声配信」2019年4月初旬まで公開中)。

将来への投資は怠らず、だけど、足元悲観で「この在庫は販売までの期間が長くなりそうなので評価を落とします、事業は見通しが良くないので設備分を(会計上)廃棄します」と。そういう動きを日本企業が取っていて、だから10-12月期の決算はよろしくない。

居林:そういうことです。市場環境の悪化に対して多くの日本企業は、無理に売り上げを伸ばさず、将来への投資を確保し、ということはそれに相応しい利益は確保し、なおかつ資産評価を切り下げてこの先の悪化にも備えている。

 売り上げはどうしたって景気に左右され、それは企業だけではどうしようもないですから、短期的に考えれば人件費や研究開発費を削り、未来の成長を犠牲にして冬眠してしまう安易な手もあります。しかし、日本企業はそうしなかった。それどころか「今は、損を出して、この先に備えるチャンス」とばかりに、思い切り屈みこんで跳躍に備えている。私は日本企業の稼ぐ力についてはいまだ懐疑的ですが、危機対応力のレベルは上がっていると思います。