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居林:個々の事件についてはわかりません。大事なのは、昨年末の時点で市場関係者は米中問題の要素、政治と経済を一体のものとして捉えていたことで、そのため、ファーウェイのCFO拘束を見て「米中の対立は予想外に深刻だ、世界経済はひどいことになるぞ」と身構えていました。

 ところが、CFOが起訴された段階で風向きが変わります。ホワイトハウスは「これは会社に対するものであって、対中国ではない。貿易問題ではない」と宣言しました(こちら)。

それはまともに受け止めていい発言だったんでしょうか。

居林:少なくとも米国は「これは貿易と切り離していいよ」という姿勢を見せた。中国側は「わかった、米国の大豆は輸入しよう、著作権保護にも努力しよう、外国企業のプロパティの提出も強要しない」と融和姿勢に転じ、それをもってマーケットは「国防(政治)問題は長引くけれど、貿易(経済)面では、それなりに整理がつきそうだな」と、2つの問題を切り分けていいと判断して、年末のパニックから目が覚めてきた。そのように見えます。

分析の正しさより、市場の反応を読むことが重要

トランプ大統領は、経済を大きく犠牲にするようなことまではしないだろうと。

居林:結局はトランプ大統領の出方次第というところもあるので、前回もこの点について話が出ましたよね。シリア撤退、マティス辞任と市場がショックを受ける出来事が続きました。しかし現状、「彼は大統領であって独裁者ではない」という結論になったのだと思います。

それは楽観論に過ぎる、ような気も……。

居林:私は政治・外交の専門家ではありませんので異論反論はあると思いますが。株式ストラテジストであり、企業投資の判断をするアナリストとして株式市場を動かす貿易問題を「市場が」どう受け止めたのかを理解することと、自分がどう考えるのかは切り離して考える必要があると思うのです。

なるほど。事実と、市場がニュースをどう受け止めるかは似て非なるものだと。

居林:2016年に原油価格暴落危機の時にもお話ししましたし、今回も最初に少し触れましたが、個人投資家が機関投資家に勝てるのは市場が混乱した時に「投資哲学」と「胃薬」を持って投資できるからだ、と思っています。振り返ってみると2016年当時の原油価格の下落は明らかに矛盾していたと思います。当時のコラムを振り返って読んでいただければよいのですが(投資哲学については、たとえばこちら→「個人投資家は今のマーケットに参加する必要なし」)、市場の原油が下がる理屈は需給ギャップから言っても過大に評価されていました(これに触れた回はこちら→「上限は1万9000円?日経平均縛る『4%』」)。今回も米中問題が経済、もっと言えば企業業績に与えるインパクトは過大評価されていると思います。