「3つの改革」の進捗は?

 「将来構想委員会」「英語力向上委員会」「海外派遣100%委員会」。

 学長就任以来、この3つの委員会を立ち上げ改革を進めていることは、この「学長日記」でも話してきました(詳細は「企業と大学の経営、実は何も違いません」)。

 まず「将来構想」の中で議題に上っていた新学部については、「観光系・インバウンド」の方向で検討を進めることが固まりました。2021年度の開設を目指して、これらの関連産業に携わる人材を育成する魅力的な新学部をつくろう、と考えています。

 この件に関しては新聞にも掲載され、地元の人にも大変よろこばれています。「APU開学以来、ずっと観光系の学部をつくってほしいと思っていた。やっと夢がかなった」と、別府前市長の浜田博さんが駆けつけてくださいました。

 おもしろいのが、浜田さんは呉服屋さんを連れて来られて、「絹の和服をAPUの学生に100着プレゼントしたい」とおっしゃるのです。どういうことか聞くと、「町おこしのイベントを開く際に、学生に着物で訪日観光客をおもてなししてほしい。協力してくれたら着物はそのまま差し上げますから」と言うのです。発想がユニークでしょう?

 あくまでまだ検討段階なのですが、それほど観光やインバウンドに関する新学部の期待感が別府の町にあふれていたということですね。

 僕は、社会の変化やニーズに合わせた学問を提供していくのが、大学の大切な役割だと考えています。社会が変わっていくのに、大学が変わらなくていいはずがない。では、現在の日本の大きな課題は何かといえば少子高齢化で、その対策として政府が柱のひとつに定めているのが観光・インバウンドです。

 政府だけではありません。九州経済連合会の麻生泰会長も、大分県の広瀬勝貞知事も、そして別府市の長野恭紘市長も、みんな観光・インバウンドを意識しています。その中で、APUがそれに応えるのは当然ではないでしょうか。

 第3代APU学長の是永駿さんからも、「立命館は私立大学だが、APUは半分公立大学だと思って経営してください」と引き継ぎのときに言われました。大分県と別府市から多額の支援をもらってできた大学ですし、地元に愛されない、支持されない大学経営は長続きしませんから、と。

 僕もその通りだと思います。オックスフォード大学やハーバード大学といった世界を代表する名門校は、いずれも地元の人に深く愛されています。地元に愛されない存在は、企業であれ、大学であれ、大きく伸びることはできません。

 国や県、市の取り組みに大学が応えれば、地域の人も元気になるし、行政も応援してくれる。それがいまの九州、大分、別府においては「観光系・インバウンド」だと考えた、ということです。

次ページ 学長就任初年度の5つの改革