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勉強すれば、世界はよくなる

 来学当日。列車がお好きなマハティールさんはJR九州の特急「ゆふいんの森号」で湯布院に入られ、そこで我々APUの教職員や学生が一行をお迎えしました。まず僕は湯布院で食事をご一緒したのですが、驚いたのは、93歳というご高齢にもかかわらず食べるスピードが70歳の僕とほとんど変わりがないこと! あっと言う間に空になったお皿を見て舌を巻きました。

 握手をしても僕より力強いくらいで、足取りもしっかりしている。もともとがお医者さまですから健康のことはよくご存知なのでしょうが、それでも92歳で政権をかけて総選挙を戦えること自体が信じられませんよね。

 食事のあとは車でAPUに来ていただき、名誉博士号の授与式を行いました。僕の人生で、一国の首相に名誉博士号を授与するのはおそらくこれが最初で最後。――そう思うと、さすがに緊張しました。

 授与式ではマハティールさんにスピーチをしていただきましたが、なんと原稿なしで、15分以上立ちっぱなし。秘書らしき方に「驚くほどタフですね」と話しかけると、「クアラルンプールの議会では2時間くらい平気で立って話していますよ」と涼しい顔で返されました。

APUの学生たちとディスカッションしたマハティール首相

 授与式のあとは、せっかくの機会ですからマレーシアを筆頭にアジア出身の国際学生をライブラリー(図書館)に集め、ディスカッションタイムに。学生もこれほど貴重な場を日本で、しかも別府の山の上で経験できるなんて思ってもみなかったことでしょう(笑)。

 学生からは、時間が足りないほどの質問が飛び出しました。新首相としてどのように国を引っ張っていくつもりか。若い世代になにを求めるか。なにを勉強すべきか――。

 いつも以上に熱のあるディスカッションとなりましたが、その中でもっとも印象に残ったのは、マハティールさんの「若い人を信頼している」スタンスです。

 「君らが頑張れば、世界はいくらでもよくなる。だからきちんと勉強しないといけない。学ぶことがすべての基本なのだから」

 その一貫した思い、信念が言葉や佇まいからあふれ出していて、学生たちも感激していました。もっとがんばらなあかんと、やる気が出たことでしょう。

 そうしているうちにあっという間にお別れの時間となり、大分空港で特別機に乗られるまでお見送りしたのですが、数日ほどあとに新聞を見たら、なんと北京で習近平国家主席と会談している。どれだけお元気なのかと仰天しましたね。