人材育成や経営戦略支援に長く携わり、ビジネス書要約サイト「フライヤー」や、ウェブメディアの経営にも参画する荒木博行氏。『世界「倒産」図鑑』(日経BP)、『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)など、ビジネスや働き方について分かりやすく解説する書き手としても知られる。高校生・中学生となった二人の子を育てる日常から得たという深い学びとは? 前後編でお届けする。今回は前編。

学びデザイン代表取締役社長 荒木博行氏
1975年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、1998年に住友商事に入社。人事部で人材育成に携わったのち、2003年にグロービスに入社。法人向け教育コンサルタント、研修講師を務め、14年、グロービス経営大学院にてオンラインMBA事業を立ち上げる。18年、同社を退社し、学びデザインを設立。フライヤーのアドバイザー兼エバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、絵本ナビ社外監査役も務める。埼玉県在住。専業主婦の妻、高校1年生の長男、中学1年生の次男との4人暮らし。
(取材日/2020年12月4日、写真:鈴木愛子)

荒木さんは経営戦略や人材育成に長く携わるビジネスリーダーであり、その経験を生かした著作活動にも精力的に取り組んでいます。代表を務める学びデザインのサイトで発信するブログには、ご自身の子育て体験も披露されています。お子さんはおいくつになりましたか?

荒木博行氏(以下、荒木):高校1年生と中学1年生。1年前はダブル受験も経験し、入学したと思ったら新型コロナウイルス(以下、コロナ)で想定外の学校生活に。なかなかハードな1年を過ごしていました。

ご長男が生まれた頃は、荒木さんがビジネススクールの運営で多忙を極めていらっしゃった時期と重なります。お子さんとはどんな関わり方をしてきましたか。

荒木:基本的には、直接の対話をしながら深く関わってきたほうだと思います。特に乳幼児期を過ぎて言葉でコミュニケーションを取れるようになってからは、“学びの仕掛けづくり”のような時間を重視してきました。例えば、週に1回くらい、「今日はどんなことがあった?」「来週はどうしたい?」と子どもたちにプレゼンしてもらうとか。「習ったことをパパに分かるように教えて」と、彼らに先生役を任せてみたり。小学生の頃は、それが習慣になっていました。

家庭内コーチングのようですね。本業が生きていらっしゃる。

荒木:自然とできてしまうのは職業柄かもしれないですね。でも、彼らに教えるというより、僕自身に気づきがあるからやっていたんです。「へぇ、子どもたちはこういう発想をするんだ」という発見は多いし、伝え方の勉強にもなる。

伝え方の勉強とは?

荒木:僕が子どもたちに伝えたいと考えていることを、大人の言葉のフォーマットのままで伝えても理解されないんですよね。だから、彼らの関心事に合わせて形を変えて伝えてみることが必要になるんです。例えば仮に彼らが今、小学生で『鬼滅の刃』に夢中だったとしたら、作中のシーンになぞらえて話をしてみる。「二人に質問です。炭治郎がこんなピンチに直面しました。さあ、君たちなら炭治郎になんてアドバイスする?」というふうに。彼らが何がしか答えたら、「なるほど、分かった。実は、今話した炭治郎の状況は、君たちの今の状況と実はすごく近いんだ……うんぬん」というふうに。

上司と部下の1on1(個人面談)にも応用できそうなアプローチですね。

荒木:そうだと思います。結局、親子でも大人同士でも、「お互いに見えているものが全然違う」という前提は一緒なんです。その上でコミュニケーションをするには、共通点を見いださないと始まらない。「この人はこういう世界観で生きているんだ」と理解した上で、その世界観に合った言葉で語りかけてようやく対話が生まれていく。子どもたちと話した内容は、手書きの絵も添えてメモを記録に残してきたのですが、時々振り返ると面白いですよ。

膨大な量のスライドになっていますね。

荒木:全部で30枚くらいにはなっていると思います。ここに書いていることの意味や価値が本当に彼らに伝わるのはずっと先なのでしょうけれど。教育って、そういうものですよね。子育てでも部下育成でも、「今すぐには分からないかもしれないが、5年後の君に向けて伝えたい」という気持ちで向き合う感覚がある。明日すぐに変わることは望まず、いつか変わることを信じて伝える。そういう意識を絶えず保たないと、教育ってできないと思いませんか。信じないといけない。でも、現実には「あれだけ言ったのに、お前はどうして勉強しようとしないのか」と幻滅することばかりなんですよね(苦笑)。

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