池田さんご自身が、息子さんとのコミュニケーションをとても楽しまれている様子が浮かびます。

池田:楽しんでいますね。息子がうちに来てから、自分の思想や哲学を「伝える」ことに強く意識が向くようになりました。世の中の多くの親子とうちの親子が決定的に違うのは、遺伝がないということ。僕たち夫婦と息子の血がつながっている確率は0.00%ですから、子育てにおいてありがちな「ママに似て算数が得意だ」とか「運動神経は俺似だな」という会話はまったく生じません。逆に言えば、遺伝で自然に伝承されるものがないから、「日々どう接し、何を伝えたか」だけが息子の育ち方に影響を与えることができるわけです。どんなふうに目を合わせ、どんな言葉をかけたか。それが息子に伝えられるすべてなのかと思うと、絶対に手を抜けないですし、面白くもあります。

ご家族3人の近影を拝見したとき、「笑顔が似ている」と感じました。でもよく考えたら不思議ですね。

池田:笑い方が僕と似ているって、よく言われるんです。きっと僕も妻も毎日明るく楽しくオーバーリアクションで息子と接しているので、よく笑う子に育っているのかなと思います。太陽のように明るく、周りを照らす子になってほしいという夫婦共通の思いがあるのでうれしいです。

 産みのご両親とはお会いしたことがないので、これも遺伝なのか僕の影響なのか分からないのですが、外遊びもすごく好きな子なんです。アウトドアやDIYで一緒に遊べるといいなと、期待に胸を膨らませつつ。ただ、何を選ぶかは本人の意思を尊重したいので、選択肢だけは早めにたくさん示して、本人が好きで得意なものを見極めて伸ばしてあげたいと思っています。まさに、「選択と集中」です。

そのためには、日々の観察が重要になりそうです。

池田:おっしゃるとおりですね。あとは、もう少し大きくなったらビジネスの仕組みを学ぶ経験もさせたいですね。例えば実際に会社をつくって、「この5000円を貯蓄するのも自由、何かを作る、あるいは投資するのも自由」と教えたりして。友達が困っていることがあったら助けることもビジネスと深くつながるのだとか、うんぬん。こういったノウハウを集めて「子ども版MBA」のようなプログラムにして、会社の事業にするのも面白いかなと計画しています。特に最近の若い親世代には、学歴一辺倒ではない本質的な学びの提供を求めている層が一定割合いると感じています。子育てを通じてのビジネスのアイデアは尽きません。

ご自身としても、起業家教育をしていきたい。それはなぜですか?

池田:これからの時代をたくましく生き抜くために必要だと感じるからです。これまでの社会では、一つの正解を当てたり、暗記したり、作業を正確に繰り返したりといった「エンプロイアビリティー(雇用される力)」を養う教育が重視されていました。しかし、これからは逆。つまり、高い給料をもらえる人間を目指すのではなく、高い給料を払える会社をつくれる人間を目指していく。そうすれば、一生食いっぱぐれることはないわけです。

 もちろん、彼自身が「職人になりたい」「農業をやりたい」と希望を語り出したら、その道を全力で応援するつもりです。無理やり押し付けることだけは絶対にしたくありません。それでも、社会が回るメカニズムを知る上でも、起業家体験に近い教育は与えていきたいですね。

(写真=池田氏提供)
(写真=池田氏提供)