当事者としての子育て体験が、マネジメントに大きく影響したのですね。

池田:さらに言えば、養子を迎えたという個人としての経験を生かして、社会課題を解消するためのプロジェクトを本格的に進めていきたいとも考えています。人の意識と態度と行動を変えられるマーケティングの力を僕は信じていて、世の中の幸せを最大化し、苦しみを最小化するためにその力を使っていきたいと常々考えてきました。

 子どもを望みながらも授からなかった僕たちが、特別養子縁組という制度を利用することで、今の幸せをつかめたことを1人でも多くの人に知らせたいから、Twitterやnoteなどのソーシャルメディアで発信したり、本を出版したりしました。でも、より大きなインパクトを出すには、持続可能なビジネスとしての組織化が重要。“社会の公器”としての役割を果たしていくために、半年前に新たにSDGsチームも立ち上げました。現在の日本で、社会的養護が必要な子どもたちの大半は施設で暮らしていて、里親制度や特別養子縁組による家庭環境で育つ子どもはごく少数派です。行政の取り組みだけでは十分に周知・普及されないことも、当事者として全プロセスを体験したことで分かりました。10年単位で時間がかかるプロジェクトにはなりますが、「マーケティングの力で、特別養子縁組を当たり前にしたい」という使命感に燃えているところです。

たまたまマーケティング会社の経営者であった池田さんが養子を迎えた。その実体験を生かして、会社の事業として発展させていきたい、と。非常に社会的意義のあるアクションですね。

池田:まずはプロジェクトから発展させ、グループ会社をつくるような流れになるといいなと思っています。養子を迎えたことをSNSで発信したときに、非常に大きな反響をいただけたんです。「実は僕も養子として育てられました」といったダイレクトメッセージが何通も来て、これまでの体験を教えてくれました。あるいは「尊敬します」「すごいですね」「幸せの形っていろいろですね」といった反応もいただきました。ありがたかったです。けれど、それらすべての根底にあるのは、「養子を育てる・養子として育つ」という選択がまだまだマイノリティーだということです。

 僕の息子が成長する過程で養子であることを周囲に伝えたときに、「へぇ、そうなんだ」とサラリと流されるくらいのノーマルへと変えていきたい。彼や彼と同じ環境にいる子どもたちが、あまり気を使わずに生きていける世の中にしていきたいので、個人として、そして経営者としてできることを続けていきます。

本連載をまとめた『気鋭のリーダー10人に学ぶ 新しい子育て』(絶賛発売中)
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本連載「僕らの子育て」が本になりました。新しい時代を担う若手経営者たちや、様々な業界のプロフェッショナルたちが、どのように「育児」と向き合っているのか。2018年8月に発売した『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』の続編。絶賛、発売中です。

■登場する10人のプロフェッショナル

佐々木大輔氏   freee CEO
沢木恵太氏   OKAN代表取締役CEO
森山和彦氏   CRAZY社長
谷田優也氏   ウェルプレイドCEO
長内孝平氏   ビジネス教育系YouTuber
宝槻泰伸氏   探究学舎代表
井手直行氏   ヤッホーブルーイング社長
仲山進也氏   楽天大学学長/仲山考材代表取締役
武田双雲氏   書道家
為末大氏   Deportare Partners代表/元陸上選手

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