現在は週2日ほどのペースで出社されているそうですが、出社日はどの程度子育てに関わっていますか。

池田:わが家は鎌倉ですので、銀座のオフィスに通勤するのに1時間半ほどかかります。出社日には朝の8時に家を出てしまいますので、息子はまだ朝食前でまどろんでいる頃。オムツを替えて水を飲ませて少し遊べるくらいです。会食がなければ夜9時頃には帰宅できるのですが、息子はもう寝ちゃっていますね。そういうときには、シンクの食器を洗ったり、床に転がっているおもちゃを片付けたり。妻も余裕がないと家事ができないのは当然ですし、朝起きて部屋がスッキリしているだけで、妻の心が安定すると思うので。しかし、最近は在宅がデフォルト化していて、「あすは出社」と言うだけで「えー! 早く帰ってきてね」と妻から要望されます(笑)。

池田さんの「仕事や趣味に没頭したい」という気持ちとの折り合いはどのように?

池田:先ほど申し上げたように、最初は「我慢、忍耐」というところから始まりましたが、今はほとんど感じなくなりました。子どもがいるから子育てをする。そんなシンプルな気持ちへと半年くらいかけて変わってきたなと感じます。

 それでも、月に1回くらい、「どうしてもこれは行きたいな」という登山や仲間との自転車ツーリングなどがあるのですが、妻は何も言わずに送り出してくれるんです。本当は「あなたが遊んでいる間に、私は……」と言いたいことは山ほどあるはずなのですが、「いってらっしゃい」と。ありがたいと同時に、その分、普段は頑張らなきゃという気持ちになりますよね。

 最近は、せっかくだから妻と息子も巻き込んでしまおうと連れていくことも増えました。イベントに一緒に参加している社員たちとも、家族ぐるみの交流を楽しんでいます。

池田さんはデジタルマーケティングの第一人者としても知られ、2007年に創業した会社を大きく伸ばした実績があります。子育てが始まってから、経営者としての視点や姿勢に変化はありましたか?

池田:もちろんありました。まず第1に、マーケッターとして、子育て関連商品やサービスについて、当事者としてよりリアルな目線で分析できるようになりました。これは僕自身の日常風景が変わったこととダイレクトに関係しています。「プロなんだから、当事者じゃなくてもできるのだ」と思っていましたが、やはり実体験しているかどうかでぜんぜん違うな、と。僕がこれまで唯一できていなかった「子育て」という人生経験をカバーできたことは、マーケッターとしての自信を強めました。

 2つ目として、メンバーに対する接し方や理解の向け方にも根本的な変化があったと思います。30歳で結婚して46歳まで子どもを授からなかった僕は、30〜40代前半というキャリアで一番アクセルを踏む時期に思い切り働けた。でも、周りの若いメンバーたちを見渡すと、この時期が子育てと重なる人が多い。制度上は子育てを応援していても、お子さんの急な発熱で休む社員に対して、心のどこかで「よく熱を出すねぇ、君の子は」と冷ややかな感情を持っていた自分がいたし、寝かしつけの苦労も知らずに深夜に平気でメールを飛ばしていた。まったくひどい社長です(苦笑)。理解が足らない状態で組織づくりをしてきたことに気づかされました。

 うちは社員の平均年齢が30歳前後で、結婚や出産のライフイベントを迎えるメンバーも多い。仕事と人生を無理なく楽しめる制度と風土づくりに、より一層力を入れていきたいと思います。今後は「週5日フル出社」という前提も見直しつつ、リモートと出社のそれぞれのメリットを生かしながら、すべての社員が働きやすい環境づくりを工夫していきたいですね。