川口:それぞれの経験が相互に生かされ始めている感覚はありますね。ホームレス支援の事業をやってきて感じるのが「選択肢があるかないかで、人生は変わる」ということ。10代・20代の相談者のほとんどが、家庭環境が貧しかったり、虐待を受けたりして、生きるための選択肢がかなり限られているんですよね。娘にはできるだけ選択肢を提供できる子育てをしていきたいなと思いました。

1歳になったばかりの娘を育てる認定NPO法人Homedoor理事長・川口加奈氏の目下のテーマは、家事育児の効率化
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武田:逆に、子育ての経験が経営に生かされそうな感覚も?

川口:ありますね。私自身が妊娠・出産・育児を経験したことで、妊娠状態や赤ちゃんを抱えた女性のホームレスの状況に対する想像力はかなり広がったと思います。あと、井上さんもおっしゃったように、子どもの成長から刺激をもらうことは多いですね。よく夫にも言うんです。「娘は0歳から1歳までこれだけ成長した。君はこの1年でどれくらい成長できた?」と(笑)。

井上:泣けますね。本当にそこと戦っているんですよ、僕らは。

武田:では井上さんの「子育てと経営」の関係は?

井上:以前、ガチャガチャ事件というものがありまして。家族で買い物に行ったときに、息子が大好きな「ドラゴンボール」のガチャガチャがあったんです。息子が隙間からのぞいて「欲しい悟空のフィギュアが、あと何回かで出る」とアピールしてきたんです。「それは確かか」「間違いない」「分かった」「じゃあ、悟空が出るまでやるから」と1回300円のマシンを回し始めたのですが、3,000円くらい使っても悟空は全然出なくて。フリーザが7体くらい連続で出て、息子の顔がどんどん「やばい」という表情に変わっていくんですよ。僕は息子が「絶対に出る」と言った言葉を信じて結果が出るまで待つと決めていたのですが、まさに経営の「損切り」と近いなと感じました。ボトムアップで「これ絶対いけます! 挑戦させてください」と言われたときに、どういう態度でいるか。僕は信じたいんですよね。すみません、ガチャガチャの話で(笑)。

武田:いや、深い話になりそうですよ。続けてください。

井上:それで結局、めでたく悟空は出たけれど、それまでに大量のフリーザも出てしまった。でも、フリーザを7体並べてみたら「悟空よりも迫力あるかも」と面白がれるセレンディピティもある。やってみて初めて分かることもある。これが伝わったかな、と。「絶対、ママには言うなよ」と耳打ちしましたが、あっという間にバレたことは言うまでもなく(笑)。