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世代を超えて近くに暮らすのが家族本来の姿

田口さん自身の家族観の形成には、やはりご自身の子ども時代のご両親との関わりが大きく影響したのでしょうか?

田口:そうですね。やはり僕が世の中で一番感謝しているのは、育ててくれた両親であり、祖父母、おじさんやおばさんです。両親は共働きだったので、保育園から帰って夕方まで、ばあちゃんと花札をして遊んでいたのを思い出しますね。「誕生日にプレゼントがほしい」と母親におねだりしていたら、「ばかもんが。誕生日は、親が産んでくれたことを感謝する日じゃろうが」とばあちゃんに怒られたのがずっと心に残っています。

 あんなに大切にしてもらったのに、成人して自立したから離れてもいいとは思えなくて。やはり家族は、多世代が寄り添って近くで暮らしたほうが自然だと思います。そもそも、成人したら地方から都会に出て家族が離れて暮らす生き方なんて、昔にはなかったモデルのはずで。発展途上国の人たちを見ていると、貧しくても家族で協力し合えている人たちは幸せそうに暮らしていますよ。「人間関係が希薄になった」と嘆く前に、まず家族が一緒に暮らすことからやり直したほうがいいんじゃないかと僕は思うんです。

会社の経営においても、家族的なカルチャーをつくっていらっしゃるそうですね。

田口:はい。僕たちは「チームワーク」に代わる言葉として「ファミリーワーク」という造語を使っているんです。つまり、家族のように助け合って仕事をしていこうよ、というメッセージです。

 1人で成功したってつまらないし、むなしいじゃないですか。喜びも悔しさも分かち合える仲間との絆を何より大事にしたいですし、一緒に働いてくれる仲間には「ここに集まってくれてありがとう」と心から感謝しています。僕は根本的に「1人になりたくない」という気持ちが強いんでしょうね。起業当初に、狭い部屋のこたつに座って1人で仕事をしていたときの寂しさを二度と味わいたくないという気持ちが、人一倍強いのだと思います。

最後に、田口さんにとって「子育て」とは。

田口:うまく言えないですが、僕にとって子育ては「親育て」かな。僕は経営者として、事業に本気で人生をかけて取り組んでいるし、一緒に働く仲間たちには、自分の子どもと同じように接しています。自分の子どもだったら、なんと言うだろうか? どう伝えるだろうか? と自問しながら、コミュニケーションを重ねています。

 すると、必ずしも短期の目標達成にとらわれずに、長期で成長を見守れる態度で向き合えたりするし、子どもたちに言うように「失敗は成功のもとだ」と励ませるようになる。子育てを通して、経営者としても成長させてもらっている。子どもを育てながら、実は一番育てられているのは自分である。そんな実感を日々もらえていることに感謝したいです。

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■登場する10人のプロフェッショナル

佐々木大輔氏   freee CEO
沢木恵太氏   OKAN代表取締役CEO
森山和彦氏   CRAZY社長
谷田優也氏   ウェルプレイドCEO
長内孝平氏   ビジネス教育系YouTuber
宝槻泰伸氏   探究学舎代表
井手直行氏   ヤッホーブルーイング社長
仲山進也氏   楽天大学学長/仲山考材代表取締役
武田双雲氏   書道家
為末大氏   Deportare Partners代表/元陸上選手