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「すごい人」になるより大切なことがある

お父さんの仕事内容についてはすでに理解を?

田口:「人を助ける仕事」というくらいで、なんとなく。というか、僕の仕事内容は、大人に対しても説明が難しいので(笑)。僕がいつもラフな格好でリュックサックを背負って、オンボロ自転車で出かけているので、近所の人たちは「田口さんとこのお父さん、何かの資格を目指している学生さんなのかしら」とささやかれているらしくて(笑)。聞かれたときには面倒なので「不動産業です」と言っているんですよ(笑)。実際、シェアハウスの事業も支援しているので、まあ、嘘ではないかなと。

お子さんたちが社会に出るまでに、どんな経験をさせてあげたいですか。

田口:とにかく、いろいろな人に会ってほしいなと思います。僕が尊敬するのは、成績や肩書が素晴らしい人ではなくて、“人のために行動できる名もなき人”。例えば、ラーメン店を営みながら、困っている友達を助けるために、1日店を閉めて駆けつけることができる人。そういう人が本当にすてきだなと心から思うんです。

 世の中にはいろいろな人がいて、それぞれの価値観があって、そのどれもが尊重されるべきであること。それを子どもたちも感じとれる経験をたくさんしてほしいし、そのためにはやっぱり“出会い”を大切にしてほしい。僕らが多国籍型シェアハウス事業「ボーダレスハウス」をやっているのも、寝食を共にする経験を通じて多様な価値観を知る機会を増やしたいからなんですよ。

お子さんにも、いずれグローバルで活躍してほしいという思いがありますか?

田口:海外で学んだり、働いたり? いやー、僕は行かないでほしいなぁ! 子どもたちとはずっと近くで暮らしたいです。本当に子どもたちにはずっと言い聞かせているんですよ。「福岡市の西区からずーっと出なくていいからね。大学は家から近い西南学院大学でいいんだよ。大きくなっても、パパと暮らすんだよ」って(笑)。

 将来は、田舎に土地を買って、中庭を四方で囲むように家を4つ建てるのが夢です。僕たち夫婦の家と、子どもたちの家。中庭には池を掘って、僕はそこで釣りをする。僕は有言実行なので、絶対にかなえたいですね。だから、今のうちから子どもたちには「海外に行かなくていいよ」と唱え続けているんです。まあ、半分冗談半分本気で言っているだけで、子どもたちが望む通りにするつもりですけどね。

グローバル志向の方が多い中で、意外な回答でした。しかし、かえって新しい気がします。

田口:理由は単純で、「家族みんなで一緒に暮らすのが自然じゃない?」というだけです。

 ただ、地球を傷つけず、人としてつつましく清廉潔白に暮らせて、何もない中にも幸せを見いだせる。周りの人を大切にして、家族仲良く、地域の人と仲良く、友達と仲良く暮らせる。そんな人であってほしいというのが、僕の願いなので。人を羨むのではなく、人を尊敬できる人間を育てるには、偏差値がなんぼだという概念は邪魔でしかないんです。

 経験としてはいろんな国や地域に連れていって、いろんな人の素晴らしい生き方を見せてあげたいと思っています。この間も、バングラデシュの出張に子どもたちも連れて行ったばかりです。世界をたくさん見る経験は必要だと思います。ただし、世界で活躍することと、人として幸せになることは、必ずしもリンクしないんじゃないかと僕は思っています。福岡という小さな都市に暮らしながらも世界とつながる仕事はできる。そういう生き方を示せたらいいんじゃないかと思っています。