子育ては親の「自己満足」だ
行動を注意することはありますか?
南:注意するというより、失敗にはできるだけ手を貸さないようにしています。息子はよく忘れ物をするタイプで、妻がせっかく早起きして作った弁当を置いて行くこともあるのですが、妻には「追っかけて持っていかないほうがいいよ」と言っています。あえて手を差し伸べないことで、失敗からダイレクトに学ばせたい。恥ずかしい思いを繰り返すことで得られる結果は2種類で、絶対に忘れなくなるか、何が起きても動じなくなるか。息子はだいたい友達にちょっとずつ分けてもらってしのいでいるみたいです。あまり懲りてませんね。
お金の使い方についての教育はどうしていますか?
南:2つの方法を示して、本人たちに選ばせました。1つは定額のお小遣い制で、使途は自由。もう1つは、お小遣いを渡さない代わりに、欲しいものができたときに都度申請して買ってもらう方法。選んだのは前者で、渡したお金についてはためるのも使うのも自由に任せています。
よく家事手伝いにお小遣いをひもづけるしつけを聞きますが、僕は絶対それはやりたくないです。お風呂掃除はお小遣いがもらえるからするのではなくて、同じ家に住むコミュニティーのメンバーだからやるもの。「役割分担なんだから、あなたはお風呂を掃除しなさい」だけでいいと思います。

ほかに、大人になるまでに経験させておきたいことはありますか?
南:働いて社会の仕組みを知る経験はさせたいですね。ふと思い出したんですけど、息子が小学校低学年の頃、模擬店にチャレンジする「子ども商店街」みたいなイベントに参加させたんです。このイベントのルールは、大人が一切口を出さないこと。息子たちが考えたのはチョコレートパフェのお店。1回目の参加のときはまずまず売れたんですけど、原材料費を引くともうけはトントン。それが小学2年生ながらにショックだったみたいで、「来年は絶対にもうける!」と張り切って、また参加したんですよ。
すると、子どもたちが考える工夫が本当にすごいんですよ。「でかい店構えにするより、人が通る道に店をつくったほうが売れるね」とか「注文しやすいように、パフェを写真に撮ろう」とか。ビックリしたのは、「僕たちが売り子をやるより、もっと小さい幼稚園児にお願いしたほうがかわいいから売れる」って(笑)。しかも、売り上げの分け前は減らしたくないから、「パフェ1個あげるから手伝って」と(笑)。

客単価を上げるために、パフェの種類を増やすなど、大人顔負けの工夫を思いつくんですよね。結果、全参加グループの中で売り上げ1位になって、すごく喜んでいました。このときも初回でこけて、「悔しさから学んだ」ということが大きな成功体験だったと思います。こういうリアルな仕事体験はやっぱりいいですね。
最後に、南さんにとって「子育て」とは?
南:僕にとって子育ては、「自己満足」でしかありません。「好きに生きろ」と言い続けるのも、子どもたちが幸せな大人に育っていくのを見ているのが楽しみだからであって、僕が好きでやっていること。例えば、「塾に行きたい」と言うから行かせたのに予習をやっていない様子だと、つい「ねえ、塾代に年間200万円かかってるんだけど? この数字、覚えておけよー」とくぎは刺しますが(笑)、このときにセットで伝えたいのは「だけど、塾に行かせたのも親の自己満足だからな」ということです。
子育ては親の自分勝手であり、完全なる娯楽。そこに犠牲は何一つない。僕が一番言いたくないのは、「お前たちのために頑張っているんだ」という言葉です。子どもが重荷に感じる必要なんてまったくなく、ただ僕が幸せになるために子どもを育てている。君たちを育てている日常を100%楽しんでいるんだということが伝わればいいと思います。

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