「斜に構えて生きろ」と子どもに教える理由

「斜に構えて生きろ」とは?

:例えば、受験をする/しないを決めるとき。東京大学や慶応大学に行ったからといって、幸せが保証されるわけではありません。だからといって、何もやりたいことが見つかっていないのに「受験なんてくだらない」と無意味に反発することもない。ただし、結果は重く受け止めなくていい。自分が行きたいと思える学校を受けて、受かったところが自分にとっていい学校だ。こう伝えました。

実際に進んだ学校はどう選んだんですか?

:本人がそのときにやりたいことができる環境や相性が良さそうな校風重視で、たくさんリストを集めて、本人に選ばせました。長女の事例でいうと、彼女は小さい頃から運動が大好きで「ダンスやチアリーディングを思い切りできる中学に行きたい」と言ったんです。だから、それができる学校を受けて、全国レベルの成績を出しているチアリーディング部に所属しています。楽しそうに毎日通っていますよ。

(写真:鈴木愛子)
(写真:鈴木愛子)

子どものうちから好きな道を選ばせる。その方針にこだわるのはどうしてですか?

:そうしなければ、幸せな大人になれないと思うからです。僕はこれまでいろんな会社で働くいろんな大人を見てきて、「絶望」がそこにあると感じたんです。僕らの親世代は、一生懸命勉強して、いい会社に入って、会社から言われる通りにしていれば、出世して昇進して、同時に会社も大きくなるから給料も上がっていった。人口と経済が膨らむ流れの中で、“成長による癒やし”が得られた時代だったわけです。

 でも、僕らの時代はそうじゃない。働く理由や生きる理由を、自分で見つけて守っていかないといけないんです。頑張った先に何かが得られるはずと進んできて、肩書もついて、部下もついたとしても、人生が劇的に明るくなるわけじゃない。ただ同じ一本道がずっと続くだけ。その道を踏み外さないように生きる未来しか見えないなんて、絶望じゃないですか。正社員で結婚していて子どもがいて、はた目には幸せに見えたとしても、実のところは深い絶望を抱えているんです。男の厄年が40代に集中しているのも、よく理解できますよ。

 これからはますます幸せの意味を問い直す時代になると思います。そんな時代をタフに生き抜くには、自分の頭で導き出した価値観で、自由に動ける力を身につけさせてあげたい。それが、僕の子育ての基本スタンスです。

 「社会に出る前にたくさん遊んでおけよ」と助言する大人の言うことは聞かなくていい、と言っています。社会に出て働くことをネガティブにとらえるということは、つまらない生き方をしている証拠なので。

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