小1の子どもが両親に900円の借金をして、家庭内でコーヒー屋さんを開く物語「小1起業家」は、今年5月にネットで公開されてから子育て世代に大きな反響を呼んだ。今回は、その作者である佐藤ねじ氏が実践する子育てについての後編。子どもがゲームで遊ぶ時間に制限は設けないという佐藤氏。リビングに散らばる洗濯物の問題など、課題を「見える化」すれば子育てにまつわる諸問題は解決できると話す。(前編:小1の息子に「コーヒー屋さん」で家庭内起業させた理由)

佐藤ねじ(さとう・ねじ)氏
1982年愛知県生まれ。名古屋芸術大学デザイン科卒業後、上京し、セールスプロモーション会社に入社。その後、デザイン事務所に移り、デザイナーとして働きながら、「佐藤ねじ」の名前で作品発表を始める。2010年、面白法人カヤックに入社。2016年7月に独立し、ブルーパドルを設立。デジタルコンテンツの企画・デザイン・PRで幅広く活動。代表作に「ハイブリッド黒板アプリKocri」「貞子3D2 スマ4D」「しゃべる名刺」「Sound of TapBoard」など。文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン・ベスト100など、受賞歴多数。著書に『超ノート術』(日経BP)がある。東京都在住。おもちゃ作家の妻、7歳の長男、0歳11カ月の次男と4人暮らし。(取材日/2019年7月1日、写真:竹井俊晴)
(前編から読む)
ユニークな発想力や創造性を育てるために、積極的につくっている体験機会はありますか?
佐藤氏(以下、佐藤):例えば「習い事は何をさせているか」みたいな話ですよね。うちは今のところ何もさせていなくて、「こういうふうに育てるために、こういう体験を」と意識的な介入はほとんどしていないと思います。将来、何になってほしいという希望も特にないので。単純に、僕自身が今面白がっていることをどんどんシェアしていく感じで、あまり子ども扱いをしていないかもしれません。
一緒によくやるのはボードゲームです。僕も好きだし、子どもも好きだから、暇さえあれば一緒にやっています。知育的にもいいらしいので、結果的に、遊びながら脳の発達にもプラスになっている。子どもはゲームのルールを覚えたり、自分で考えて作ったりするのが好きなので、よく「新しいボードゲーム考えた!」とプレゼンしてきます。でも、まだ面白いと言えるレベルじゃないです。そこは厳しく評価します。
子どもとどんな遊びをするのかには、子育ての価値観が表れます。ボードゲームのほかには何を?
佐藤:「ニンテンドースイッチ」のようなデジタルのゲームもやりますよ。「ゲーム禁止」の家庭もあるようですが、うちは全部OK。なぜなら僕が好きだから(笑)。時間制限もなく、「僕が一緒にいる間はゲームをやっていい」という決まり。土日に一緒に遊ぶときは、ボードゲームか、ゲームか、ラジオ収録か。このどれかを選ぶことが多いですね。
ラジオ収録も本人にとっては遊びと同じ感覚みたいです。でも、子どもなので時々見えをはって「野菜はピーマン以外はだいたい食べられるんだけどさ」とか大ウソを言ってしまうあたりがかわいいですね(笑)。
外の公園に行くときも、オリジナルのルールをつくって遊ぶことが多いです。例えば、最近ハマっていたのは「サッカーゴルフ」。目的地のポールまで、サッカーボールを何回蹴ってたどり着けるかを競うルール。
既存のルールで遊ぶのではなく、「新しいルールをつくる」ことに遊びのポイントを置いているんですね。
佐藤:それは仕事もそうですよね。できあがったゲームで遊ぶより、ゲームのルールをつくる側になるほうが断然面白い。子どもは本来、ルール、つまり“設定”を考えるのが大好きな生き物なんですよね。最近、仕事で探究学習をテーマにした塾「エイスクール」のサイトを制作する手伝いをしている中でも、そう感じました。この仕事の依頼も、僕の子育て系の作品を見ていただいてのオファーでした。公私が自然とつながることが多いです。
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