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「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代、旬のプロフェッショナルたちはどんな子育てをしているのか。今回は、人材開発の若手研究者として注目を浴びている立教大学経営学部の田中聡助教の子育て後編。田中氏が、「何で?」と子どもに聞かない理由とは?(前編:「できる子」でなくてもいい。「嫌なやつ」には育てない

田中聡(たなか・さとし) 立教大学経営学部経営学科助教
1983年山口県生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)に入社。2010年インテリジェンスHITO総合研究所(現・パーソル総合研究所)の設立に参画。同所のリサーチ室長・主任研究員を経て、2018年4月より現職。専門は人的資源開発論・経営学習論。千葉県在住。専業主婦の妻、6歳の長女、2歳の長男と4人暮らし。(取材日/2019年7月10日、写真:鈴木 愛子)

前編から読む)

叱り方について意識していることはありますか。とても穏やかそうな印象ですが。

田中:子どもを叱るときは、わりと感情を出して強めに言うようにしています。僕は普段はあまり喜怒哀楽が顔に出ないタイプなので、普通に指摘するくらいでは子どもに伝わらないとある時に気づいて。子どもも、僕が強く叱ると普段とのギャップを感じるらしくワーッと泣いています。その様子に妻から「言い過ぎなんじゃない?」と、僕が叱られるという……(笑)。子育てって難しいですね。勉強中です。

 あと、「他者に対するフィードバックは時間を置かずに即座にその場で行うほうがいい」という人材育成の知見を子育てでも意識しています。

専門家の立場から、「将来、リーダーとして活躍できる大人に育てるために、子どもの頃にどんな育て方をしたらいいのか?」という質問が来たら、なんと答えますか?

田中:経営リーダーの幼少期というと、どうしても世間は「壮絶な成育環境」や「波瀾万丈(はらんばんじょう)な生い立ち」など「一風変わったストーリー」を期待しがちです。ただ、当然そんなリーダーばかりではありません。ごく普通の会社員家庭で育ち、大活躍している経営リーダーもたくさんいます。成育環境それ自体より、むしろ重要なのは、親や教師といった身近な大人の“関わり方”ではないでしょうか。

 社会心理学の故・山岸俊男先生も著書で紹介していますが、僕の大好きな研究の1つに「天才は先生につくられる」という話があるんです。米国の小学生の中からランダムに選ばれた数人の生徒に関して、「この子は類いまれなる能力を持っている可能性が極めて高い」と教師だけに伝えた結果、その子たちの1年後のテストの伸びが有意に高くなったという。つまり、関わる側が期待感を持って子どもと接することで能力開発にプラスになる。この研究結果は幾つもの小学校で再現されています。

 関連して、成果を導き出すリーダーの多くに共通しているのは、いわゆる「根拠のない自信」の強さですよね。リーダーにとって修羅場は日常茶飯事です。そういう難しい局面で必要になるのは、「自分はできる。きっとやり遂げられる」と自分で自分を信じられる力。

 同時に、他者との相対比較ではない「自分の成長」という物差しで自分自身を評価する癖も獲得している。「過去の自分と比べて、今の自分はどれくらい成長できているか」という基準で、自分自身を評価できる人はメンタルも強くてブレないですね。ですから、僕も子どもたちには「自分で自分を信じる力」を育んでもらいたいなと思い、できるだけ“根拠のない期待”を浴びせるようにしています。