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唯一のポリシーは「他者に対する想像力」を育むこと

習い事は何かさせていますか。

田中:下の子はまだですが、長女はバレエと公文に通っています。公文を選んだ理由は、通っている幼稚園が遊び重視の方針なので、修学準備として机につくことに慣れさせたほうがいいかなと考えてのことです。小学校の環境に慣れずに戸惑う子どもも少なくないと聞き、ちょっと足場かけをしてあげようという目的で。

 ただ、これも妻が主導で決めたことで、僕自身は「こういう子に育てたい」というポリシーがまったくと言っていいほどないんですよ。すごくドライな言い方に聞こえるかもしれないのですが、わが子であっても“他人”だという感覚が強いです。自分の所有物でもなんでもない、独立した人間として見ているので、普段から「分からない相手」という前提で接している。妻からはよく「研究対象みたいに観察しているね」と笑われますが、まさにそういう感覚なのかもしれません。職業柄でしょうか。

「親なのだから、子どものことは全部分かっている」と思い込みがちですが、そうではないということですね。

田中:そうですね。ただ、1つだけ大切にしていることとしては、「他者に対する想像力」はしっかりと育んでほしいということです。これは、どんな時代でも絶対に変わることのない、人が社会で生き抜いていくために必要な力だと思うからです。

他者に対する想像力。例えば、どういうシーンで子どもたちに教えるのでしょうか。

田中:ささいなことですよ。友達の自転車に乗りたい気持ちが急せいて、ちゃんとお願いしないままに乗ろうとしてケンカになってしまったときとか。相手の立場に立って考えていない様子や、素直に「ごめんね」「ありがとう」が言えていない様子が見えたら、結構きつく叱るようにしています。

 「できないやつ」になっても全然構わないのですが、「嫌なやつ」にだけはならないでほしいなと思うんです。うまくいかなかったときに、周りが「助けてあげよう」と思えるような人に育ってほしいな、と。僕の研究テーマに引きつけて言うと、“支援を得られる力”はチームや組織で何かをするときにとても重要です。