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「開かれたオタク」になるために

柴山氏(以下、柴山):その話を聞いた後、僕は伊佐山さんに聞いたんです。「お子さんが4人いると、それぞれの興味関心が違ったときはどうするんですか。全員に付き合うんですか」と。すると、「それぞれ子どもが興味のあるものに、家族全員で付き合う」とおっしゃるんです。

伊佐山:例えば映画に行くときは、どの作品を見るのかを全員で協議します。ポケモン、NARUTO、ONE PIECE……、それぞれに見たいタイトルを挙げさせて、今日は何を見るのか決めて、全員で同じ映画を見るんです。すると、「『NARUTO』って全然見たいと思っていなかったけれど、結構面白いね」という気づきも生まれる。この間は僕のわがままで『ボヘミアン・ラプソディ』を見ました。最初はブーブー言われましたが、結局、一番ハマったのは最年少の三男(笑)。そういう、計画しない刺激が起きるのもいいかな、と。

柴山:興味の範囲を広げるための仕組みを作った、ということですよね。

伊佐山:ちょっとカッコよく言いすぎました(笑)。実際には、かなり不機嫌になる子もいるし、嫌がられる中で、「あと15分で映画が始まるから、すぐにクルマに乗って」と半ば強制的に連れて行っているのが実態です。全然、スムーズな日常ではないんです。

宝槻:もう1つ、思い出したので共有させてください。好きなこと、興味のあることを子どもが見つけた先にあるのは、ある分野に夢中になって、オタクになる姿です。このときに親が気になるのは、わが子が、「開かれたオタク」として成長してくれるか、「閉じたオタク」になってしまうか、ではないでしょうか。

 開かれたオタクとは、つまり自分が好きなことを他人ともシェアして、価値を世の中にも提供できる人のこと。閉じたオタクは内にこもってしまうパターンですね。できれば前者になってほしいと願いますが、どうしたらいいのか、そのヒントを教えてくれたのが、少し前に触れた地球少年でした。

 彼は「僕は地球が大好きだけど、人も大好きだ」と言うんです。人への興味や愛情もあるから、自分が愛する地球のことを、周りの人にも伝えたくなるんだそうです。きっと、人間への興味も同時に育てることが、好きなことを尊重する子育てでは重要なんだと思いました。

武田:そろそろ時間も終わりに近づいてきましたので、最後に、今日の学びをシェアしましょう。

伊佐山:うちの場合は子どもたちが大きいのですが、これまでと変わらずに新しいことをやり続けて、興味関心を刺激したいと思います。そのためのきっかけを作っていきたいですね。

柴山:「子育て経営学」というセッションタイトルの通り、子育てと経営には共通する点も多いのだけれど、子育てで大事にしてきたことを、経営でできていたかな、と考える時間になりました。例えば「エクスポージャーを最大化する」という心掛けは、子どもに対してはやっているけれど、社員に対してできていたか。あるいはほめることを、社内でどれだけ実践できていたか。

 宝槻さんの「開かれたオタクと閉じたオタク」という話も興味深いですよね。ベンチャー起業家は恐らくほとんどがオタクです。僕も「とにかく金融を自動化します」と言い続けて、放っておけば閉じたオタクになっていたはずです。けれど、リーダーがいて、フォロワーがいて、そこから広がって会社が育つ。子育てと会社育ては似ているな、と思いました。

末松:今日ここに登壇して、誰も既存の教育システムに対する不満を言っていないことに驚きました。自分の責任の中で、自分でできることを最大限やっていらっしゃる。それがすばらしいなと感じました。

 一方で、子育てはその時期が過ぎると自分ごとではなくなってしまいます。すると、次世代への責任が果たせないままになるんです。私はそうやって親の世代が何もしてこなかったことに怒っています。

 私は次世代のためになることを残したい。そんな思いから、学校を立ち上げることに決めました。日本で初めての全寮制の小学校です。これからますます活躍する女性たちに、「プロに任せる」という教育の選択肢を示せたらうれしいです。私も新たな挑戦を通じて次世代への責任を果たしたいという思いを強めました。

宝槻:会場の皆さんと話していると、「今の時代に合った教育論に共感できた。自分もチャレンジしたい」といった力強い声が聞かれて、僕も勇気づけられました。これからも自分の軸をブラさずに子育てに仕事に、特に会社経営においてはリーダーとフォロワーの関係も勉強しながら、全力でやっていきたいと思います。

武田:あっという間でした。子育てにはまだまだ先があります。「子育ては終わらない」、いや、「終わらせない!」。皆さま、ありがとうございました。