全5006文字

夫婦で腰を抜かした! 衝撃のポケトーク事件

末松氏(以下、末松):私も夫も、この社会に適応して生きてきた人間です。親が生きてきた人生の延長線上に子どもを置いてはいけないと思っているんです。

 だから、子どもとの距離をできるだけ取る努力をすることが、親のできる最大限のサポートだと思っています。私のようなちっぽけな人間の影響は受けないでほしいと思います。

武田:面白いですね。僕も自分の話をしたくなりました。

 僕には8歳の息子がいて、最近は「子どもが行きたいと願う場所に、なるべく早く行けるように手伝う」のが自分の役割ではないかと思うようになりました。そのきっかけとなった、ある事件についてお話しします。

 去年の夏休み、息子をスイスのサマースクールに入れたんです。彼はまだ英語が全くできません。「読めない、書けない」状態でのサバイバルをさせようと考えたわけです。一方、自分としては、「この経験によって、外国の人ともっと話したい、外国語をもっと勉強してみたいと思ってくれたらいいな」などとひそかに期待していました。まさに、親が設計した未来です。

 2週間後、帰ってきた息子にはやはりそういう意識が芽生えたようで、「よしよし。狙い通りだ」と思っていたわけです。そして半年たった頃、息子の誕生日が近づいてきたので「何が欲しい?」と聞いたところ……なんと、「ポケトークが欲しい」と言われたんです(笑)。あの携帯型の自動翻訳機です。絶句しました。「え、勉強するんじゃないの?」と。妻と緊急会議を開きました。

 でも、結論は割とすぐに出たんです。ポケトークは「あり」だ、と。息子の思いは純粋に「外国の人たちと会話がしたい」ということです。そして、そのための最短ルートがポケトークだと彼は考えた。非常にシンプルですよね。親が与えられるモノなのに、与えないのはあり得ない。そう妻と意見が一致しました。僕たちだって、英語を勉強するときに、電子辞書を使ったりしましたよね。ですから、たどり着きたい場所に向かおうとする息子のショートカットを否定する理由はない。そう考えました。

 ポケトークを手に入れた息子の喜びようは、半端なかった。ゲームの勇者的なオーラをまとっていた。「ああ、この自信がきっと突破力になる」と感じました。息子の「ポケトークが欲しい」というひと言が、僕の思考のフレームを外側から壊してくれました。

 伊佐山さんと柴山さんは、どんな話をされたのでしょうか。

伊佐山氏(以下、伊佐山):僕は先ほど話したように、環境さえ許せば、いろいろな体験をさせたいと思っています。あと僕がやっているのは、「親も一緒に楽しむ」ことです。例えばアニメ。米国に住んでいるから、子どもの日本語の勉強のために、日本のアニメを見せています。そして僕も一緒になって見ているんです。すると「最近のアニメはよくできてるな」と学べるんです。アニメのイベントに一緒に行って、「これだけの人が集まって、これだけの消費があるのか」とついビジネス目線で楽しんだりもしています(笑)。僕の知らない世界に出合えるわけです。

 子どもって単純なので、自分が好きなことを親も気に入って一緒にやったりすると、うれしがりますよね。だから僕は、積極的に一緒にやるんです。ゲームなんて、僕の方がハマって、子どもが引いているんです(笑)。子どもは1日1時間のルールなのに、僕は大人だから無制限にできるわけです。子どもが寝ている間にやっていると翌朝、「夜中までやったな」と怒られたりします(笑)。「いやぁ、オンラインゲームは麻薬性があるね」とか僕が懲りずに言うのを聞いて、子どもの方が、「やばいからもうやめよう」となる。そうやって一緒に遊んで、結果として、好きなものの発見につながればいいと思います。