全6946文字

 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載34回目に登場するのは、探究学習を柱とした教室「探究学舎」を東京・三鷹で運営するワイズポケット代表取締役の宝槻(ほうつき)泰伸氏。独自の教育論を掲げ、テレビ番組「情熱大陸」でも紹介されるなど大きな注目を集める「探究学舎」を率いる宝槻氏は、5人の子どもの父親でもある。家庭ではどんな教育を実践しているのか、話を聞いた。

 なお宝槻氏は2019年9月2日~5日に京都で開催される「ICCサミットKYOTO 2019」のプログラム「『子育て経営学』—私たちは子供をどう育てていくのか?(シーズン2)」に登壇する予定だ。本連載にも登場した日米のベンチャー企業の発掘・育成を手がけるWiLの創業経営者・伊佐山元氏らとともに、子育てと経営の共通点などについて語り合う。

ワイズポケット代表取締役 宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)氏
1981年東京都生まれ。京都大学経済学部卒業。「探究心に火がつけば、子どもは自ら学び始める」をモットーとする父親のもと、独自の教育を受け、高校中退から京都大学への進学を果たす。大学卒業後には起業し、高校への出張授業やeラーニング事業を始める。約5年の開発期間を経て、探究学習を柱とした教室「探究学舎」を東京・三鷹に開校。全国への出張授業も展開し、2018年だけで、国内外から約3000人が受講した。その独自の教育論はテレビ番組「情熱大陸」でも紹介されるなど、大きな注目を集めている。著書は『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『探究学舎のスゴイ授業』(方丈社)など。東京都在住。同社取締役である妻、10歳の長男、7歳の長女、5歳の次女、4歳の三女、2歳の次男と7人暮らし。(取材日/2019年8月1日、撮影/鈴木愛子、ほかも同じ)

宝槻さんが代表を務める「探究学舎」は、子どもたちに驚きと感動を与えて、夢中にさせる授業が話題です。気鋭の教育者である宝槻さんがわが子をどう育てているのか、今日はじっくりと聞かせてください。お子さんは5人いらっしゃるそうですね。

本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

宝槻氏(以下、宝槻):上から、小4、小2、年長、年中、3歳。男、女、女、女、男の並びで、にぎやかに暮らしています。

 教室の経営が忙しいので、平日は朝くらいしかコミュニケーションできる時間はありません。時間があるときは保育園まで送ることもありますが、それも最近はシッターさんにお願いすることもたびたびです。基本的に、かなり周りの力を頼って子育てをしている、というのが宝槻家の特徴です。

どういう人の力を借りているのでしょうか。

宝槻:普段から友人や知人の家でお世話になったり、逆にうちに来てもらったりしています。

 例えば今日も、長男と長女は、ご近所仲間の70代のおじさんにキャンプに連れて行ってもらっています。以前住んでいたマンションの上階に住んでいた方で、公園で知り合って仲良くなったんです。

 孫みたいにかわいがってくれていて、お互いに喜んで子どもたちを預け・託される関係ができています。

 僕も子ども時代は、親父に連れて行ってもらったキャンプでいろんなことを学びました。けれど残念ながら、今は自分の子どもたちを連れて行ける余裕はない。だから、代わりに連れて行ってもらえるのはありがたいですね。

お子さんたちが安心して親以外の大人と交流できるのは、宝槻さんご夫妻の後押しがあってこそだと思います。普段から、伝え方などで心掛けていることはありますか。

宝槻:そう意識しなくても、「子育てを家の中に閉じ込めない」という感覚が強くあるのだと思います。

 家の内と外の境界線を明確にしてしまうと、その家庭の限界が、子育ての限界になってしまいますよね。だから、できるだけ境界線を曖昧にして、外の力をどんどん借りたほうがいい。

 僕自身の育てられ方がそうだったというのも大きいですね。親父はいつも、僕の友人もわが子と分け隔てなく接していて、怒るときも本気で怒る。「初めて他人の父親にぶん殴られた」という同級生が続出しましたから(笑)。

 僕も今は、大勢の他人の子どもたちに関わる仕事をしていますが、自分の子どもとほとんど変わらずに向き合っている感覚があります。「わが子」という概念も、あまりないかもしれません。例えば、いじめが起きているという現場の中に自分の子がいたとしても、それほど動揺しない自信があります。

ちなみに、宝槻さんのお子さんが通う学校は特別な学校なのでしょうか。

宝槻:近くの公立校です。