全5777文字

息子2人と白装束で山登り

西澤:「人前で堂々と振る舞う訓練」という意味では、1つ心当たりがあります。うちは男の子に対しては、3歳になると「大峰山」の “修行”に参加させるんです。

 毎年7月に、経営者を中心に100人くらいの男や少年たちが集まって、白装束姿で一斉に1700メートル級の山に登る行事なんですが、長男、次男それぞれ3歳から、ほぼ毎年参加しています。

 小さい子どもも原則は「抱っこ禁止」で登り切るルールなので、見知らぬ大人たちに混じって、彼らも必死についていく。初めて参加した後、長男の顔つきが明らかに変わったので、次男も3歳以降は連れて行っています。

 まだ「ママ、ママ」と甘えたくなる年齢から、父子だけで遠出するのも、なかなかいいですよ。この行事以外にも、普段から経営者の集まりに連れて行ったりしているので、あまりものおじしないほうだと思います。

年に1度は、「父子だけの濃密な時間」を過ごしているのですね。

西澤:幼稚園や学校を卒業するタイミングで、“父子2人旅”もしたいと思っていて、すでに長男と次男とは、幼稚園の卒業時に一緒に旅をして、「小学校卒業までの目標」を書かせました。目標を書いた紙は封筒に入れて、6年後の「小学校卒業記念旅」で開けるつもりです。といっても、「嫌いな野菜を食べられるようになる」とか、たわいもないものでしたけれど(笑)。

 小学校卒業時には行き先を海外にしようと思っているので、今から「どこに行こうか」と話しています。

子育てにおける役割分担は、夫婦で決めていますか。

西澤:うちの場合は妻が専業主婦で、私は平日朝の20分程度しか子どもたちと接することができないので、日常的な子育ては、妻が担ってくれています。私はどちらかというと、より長い時間軸での世界観や将来に向けての目標を考える時の伴走をするのが役割かなと思っています。

子育てを経験したことで、西澤さんご自身に変化はありましたか。

西澤:経営者になって間もない頃の私は、仕事没頭人間でスーパーワーカホリックな人生を突っ走っていました。それが、子どもができてからはいろんな悩みや葛藤の中で、人間として成長できたなと思います。

 子育てを経験して、本当の意味での「いとおしさ」や「情」のようなものを知ることができた気がします。すると、例えば新卒で入ってくる社員の顔を眺めた時、その後ろにいる親御さんの顔まで想像できるようになるんです。人との関わり方は、大きく変わったと思います。

ご両親から受けた教育の中で、今のご自身に強く影響を与えたことは何でしょう。

西澤:子どもの頃、私はかなりやんちゃな問題児でした。多くは言えないですが色々問題を起こし学校に呼び出されたことも。

 うちの父親はPTA会長をやっていたので当然、話が回ってくるはずなのですが、「反省しろよ」と言われるくらいで、強くは怒らない。

 あげ句の果てに、中学3年の冬、私は高校受験当日に試験をすっぽかしたんです。「前の晩から友だちの家に泊まって受験に行く」と嘘をついて。今思えば優等生だった兄と比べられるのが嫌で、同じ高校を受けたくなかったんだと思います。

 これには両親も「手に負えない」と思ったようで、淡々と諭されました。「亮一、こんな狭い田舎にいてはダメになる。札幌に今から受けられるいい高校がある。そこを受けて、この町から出ていきなさい。あとは全部、自分の力で頑張ってみなさい」と。

 これを機に、私は15歳で自活を始めて、何とか人生を切り開いてきました。

 この時、親が私を「一度も怒ることなく、突き放した」という姿勢に、私はとても救われたんです。人間が成長を続けるには、コンプレックスと、それをはね返せるだけの自己肯定感、そして胆力が必要だと思うんです。

 この3つをセットで磨くことで「自分を信じ、やると決めたことをやり抜く力」が身についていく。特に自己肯定感を育てることは大事だと思うので、自分の子育てでもかなり意識しています。だから、めったに怒らないです。