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口グセは「へぇ、こんな感じなんだ」

為末:一番ファンダメンタル(基礎的)な力となるのは、やはり「自己肯定感」だと思います。その上で、成功するために大切なのは、「いろいろとやってみよう」と試行錯誤する気持ちになれること。

 では、子どもが試行錯誤に前向きになるにはどうしたらいいか。僕は、側にいる大人たちが「なるほどね」「面白いね」「それ、いいんじゃない」と、感心しながら促していくことが大事なんだろうと思います。

 子どもが「こっちじゃないか?」と思う方向に任せて一緒についていく。それはある意味、ギャンブルでもあるし、面倒くさいときもあるけれど、子どもなりに“仮説を立てて検証する”経験をたくさんさせてあげたいと思っています。

 「これはどうなっているんだろう? ひょっとしたらこうじゃないかな?」と自由に発想させて、実際にやってみて、どうだったのかを検証して、まとめる。その一連のプロセスが“学習”の本質になるんじゃないかと考えています。

そのプロセスをサポートするために、親ができることとは何でしょう。

為末:まずは、親がその姿勢を示して手本を見せることでしょうね。僕もできるだけ、自分なりの仮説検証を、子どもの前で口に出すようにしています。夫婦間でも「それは、きっとこういうことなんじゃないか」といった会話をよくしています。

 同時に、“実践”が伴うことも大切です。僕はよく「スターフルーツ」に例えて話をするのですが、 スターフルーツを知らない人に対して、その形状の説明をしてから絵に描いてもらうと、当然ながら、人によってバラバラのイメージを描くんです。味も全く想像ができないはずです。けれど、スターフルーツの実物が登場して、ひと口でも食べたら、その瞬間からスターフルーツの理解度が全く変わります。つまり、学習においては体験することがすごく重要なんです。

 ものごとの一つひとつの概念を、どれほど身体感覚を持って記憶しているか。そして、それがどれほど蓄積されているか。それが「知性」につながるはず、というのが僕の仮説です。

 だから、子どもが小さい時に親ができる支援は、とにかく「体験させること」「試させること」。その点は自分自身の子育てでも、かなり意識していると思います。

キャンプをして遊ぶのも、いろいろな体験をするきっかけになるのでしょうか。

為末:そうですね。行った先で、「へぇ、川辺の砂ってこんな感じなんだね」「山はこんな感じなんだね」と一緒に言いあっています。無意識で受け取る情報の蓄積をどれだけ増やせるかが、大事だと思っているので、できるだけいろいろな対象に触れさせたいと思っています。

 「まだ見たことがないあれは、どういう感じなんだろう」と想像して、実際に体験して「へぇ、こんな感じなんだ」と理解する。その繰り返しがきっと大事なんだと思います。

 息子ももう口癖になっちゃったみたいで、この間、初対面の方の家に招かれて連れて行ったときにも、家の中に入るなり、「へぇ、こんな感じなんだ」と無邪気に言うから、慌てました(笑)。