「子育てプレイ」で働き方改革?

育成のあり方についても挑戦しているのですね。一方で、高橋さんのようなクリエイティブ職には、「どこまで突き詰めるか問題」も生じませんか。仕事のクオリティーを求めたい気持ちと、家族との時間を確保したい気持ちとの葛藤とは、どう向き合っていますか。

高橋:先ほど話した「週2早帰りルール」という線引きをしたことで、心理的には切り替えやすくなったと思います。

 もちろん、どうしても仕事が終わらない、終わらせたくない時はありますが、その場合は起床時間を前倒しします。「朝の時間を延ばせば仕事がはかどる」というのは、子育てを始めてからの大きな発見でした。

 基本の出社時刻は10時なのですが、もっと早く仕事を始めたい時は7時に開店するスターバックスで、さらに早めたい時は3時からファミレスにこもります。3時を朝と考えるかどうかは微妙なところですが(笑)、やるべき仕事の量に応じて、「10・7・3(時)」の3段階で調整しています。これで結構うまくいっていますね。

働き方を変える時には、同僚の皆さん、特に同じ制作チームの方々への周知伝達も必要になると思います。高橋さんの場合は、どうされましたか。

高橋:初め肝心ですよね。子どもが生まれる前から「週2回、夜10時に帰るルール」は導入したのですが、その時にはかなり周囲に言いました。「今日はオレ、“10時デー”だからよろしく!」と。

 「奥さんが超寂しがり屋なんだよ~」と妻のキャラも打ち出して、「高橋がまた10時デーとか言ってるよ(笑)」といじられつつ。面白がられるくらいがちょうどいいな、と思っています。

 僕より若い世代はもっと意識が変わってきていますよね。後輩のディレクターも、堂々と子育ての時間を確保する子が多くて、「今週は妻が忙しいんで、早く帰って子育てしなきゃいけないんですよ。だからロケをあまり入れたくないんです」とか平然と言ってきてくれるから、頼もしいですよね。そういう時代になったんだな、と。

ひと昔前とは違うと感じますか。

高橋:昔も子育てをしていた先輩はいたと思いますが、それを隠さなきゃいけない雰囲気があったのかもしれませんね。

 今はテレビ業界にも、「子育てってカッコいいだろうプレイ」が流行っている気がします。テレビマンって、何でも面白ければオーケーという人種なので(笑)、「プレイ」にしちゃえば受け入れられるんじゃないですかね。

子育てが始まる前と後で、高橋さんが手掛ける番組の内容にも変化はありましたか。

高橋:それはありますね、多分。変わったと思います。より優しくなりました。

 何につけても“親目線”で考えるクセができました。VTRに登場する人だけでなく、普段接するすべての人に対して、「この人にも純真無垢(むく)な赤ちゃんだった時期があったんだなぁ……」と思いをはせるクセが(笑)。

 高圧的な言葉を浴びせてくるおじさんを前に、「オムツを履いていた時期にはかわいかったんだろうなぁ」と想像したり、ミスばっかりするAD(アシスタントディレクター)を注意しながらも、「故郷の親御さんは年に2回の帰省を楽しみにして、『東京でちゃんと頑張れているのか』と心配しているんだろうなぁ」と思いをはせたり。

 クリエイターとしてはどこか狂気めいた感情も持ち続けた方がいいので、それも残そうと意識はしていますし、単に経験値が広がっただけだと思っていますが、想像力が及ぶ範囲はだいぶ広がった気がします。放っておくと、妄想が「お宮参りでよろこぶ親戚一同の図」まで行ってしまうくらい(笑)。(後編は6月4日に公開予定)。

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