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 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 先週から6週にわたって紹介していくのは、2018年秋に開催したイベントの様子だ。

 本連載を1冊にまとめた『子育て経営学』の発売を記念して、本書にも登場するWiL共同創業者CEO(最高経営責任者)の伊佐山元氏と、NPO法人クロスフィールズ代表理事の小沼大地氏が登壇。本連載の著者であるノンフィクションライターの宮本恵理子氏がファシリテーターとなって、実際に2人の子育てについて話を聞いた。

 今回は、「子育て経営学」イベントリポートの2回目。今回のテーマは「習い事」について。親ならば子どもにどんな習い事をさせるのか、迷うものだろう。長女を米スタンフォード大学へ入学させた伊佐山氏は、果たしてどんな習い事をさせてきたのだろうか。また長女の習い事で1カ月悩んだという小沼氏は、結局、どのような決断を下したのだろうか。

イベントに登壇したWiL共同創業者CEOの伊佐山元氏(写真右)とNPO法人クロスフィールズ代表理事の小沼大地氏。伊佐山氏は、専業主婦の妻と、1人の大学生の娘、3人の息子たちの6人家族。長女は2017年、米スタンフォード大学に入学した。小沼氏は共働きの妻と、男女1人ずつの子どもの4人家族だ
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

宮本氏:習い事について伺いたいと思います。伊佐山さんは、お子さんにどんな習い事をさせていますか。取材した際には、結構いろいろと挙がりました(詳細は「オールAより、B、C混じりの成績をほめる」)。

伊佐山氏:まずそもそも、人との関係を大事にしてもらいたいと思っています。人のことを思いやるように育ってほしい。そう思っているので、1つは団体スポーツがいいと思っています。

 なぜスポーツがいいのか。それは、絶対に試合に出られる保証はないのに頑張らないといけないからです。ケガした人を助けたり、いろんな問題をチームで乗り越えたりしていかないと、勝てません。

 一方の個人スポーツは、自分が怠けるとそれがそのまま結果に出ます。だから、手を抜けない。うちの場合は、ゴルフを習わせています。シニアとも一緒にプレーできますし、一生楽しめるスポーツでもあります。またゴルフは、米国に住んでいれば始めるハードルもさほど高くありません。

 あとは感性を磨くようなこと。私のビジネスでは、現在や未来のテクノロジーがどんな風に生活に変化を及ぼすかを考えています。どういうビジネスが受けるかな、とか。

 AI(人工知能)やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)など、新しい技術はたくさんあるけれど、これから先、社会がより効率化されて、これまで人間がやってきたことを、今後はロボットやAIがやってくれるようになります。

 そして人間は今後、コンピューターと一緒に仕事をする機会が増えるはずです。その時、人間に求められるのが感性なのだと思います。感性豊かな人が、コンピューターに「何をさせるか」を考える。ここで大切なのが、クリエーティブな力です。

 ほかの人には見えていない社会の変化や不便を見つけて、「なんで不便なのに放っておくのか」「こんな問題が起きているのに、なぜ誰も解決しないのか」と気づく力。それがクリエーティブな力であり、感性だと思います。だからこそ、アートや音楽などで感性を磨かなくてはならないのです。

 うちの子たちはずっと楽器を習っています。全員がいろんな楽器をやっているのですが、それは「ずっとピアノを習わせ続ける」という考え方ではありません。ピアノが嫌いになったら、別の楽器に変えていく。また絵が好きな子には、絵を習わせたり、美術館に連れて行ったりもしています。

 個人競技と団体競技、そして感性を養うような絵や音楽。それが我が家の習い事の基本です。

 あとは、子どもたちが高校生や大学生になると、ロックでもクラシックでもいいから「いい音楽を聴こうよ」と言っています。

 時々、「子どもに何を習わせればいいですか」と聞かれることもあります。それはもう、子どもの興味や関心を見ながら、親が決めて、試していけばいいと思います。ただ、1つだけ大切にしなくてはならないことがあります。