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息子の学校との面談で腹をくくった

井手:ずっと先生のお話を聞いていましたが、「お父さんはどう思われますか」と聞かれた時、こんなふうにお話ししました。

 「本人の家での様子から、学校での振る舞いは容易に想像できます。自分の行動が原因で勉強が遅れてしまうことは構いませんが、友達に迷惑をかけるのはいけないことだと本人にも教えていきます」

 「ただ、きっと本人にとっては、これまで自由にやってきた生活から一変して、戸惑いを感じてストレスから起こしている行動も少なくない気がします。先生、もし許容いただけるのであれば、授業中の彼の行動があまりに目に余る場合は、図書室で自習をさせられないでしょうか」

 図書室での自習は管理上できないという返答を得て、さらに僕は提案しました。

 「でしたら、運動場に彼を放り出して好きに遊ばせてやれないでしょうか。彼はきっと喜んで一人でも遊びます。遊び疲れて退屈になったら、教室に戻ってくると思います。先生や友達に迷惑をかけるのはいけないけれど、彼の気持ちも尊重できないかという折衷案です。ぜひそうしてやってくださいませんか。お願いします」

 まさかそんな提案が来るとは思っていなかったのでしょう。先生はポカンとした表情をされていました。隣のカウンセラーの先生に「どうでしょうか?」と尋ねてみたところ、ありがたいことに「お父さんがおっしゃるように、可能な限り対応して様子を見られると一番いいと思います」と助け舟を出してくださいました。

そうはいっても、何かあったときの責任が付きまとう問題ですよね。

井手:はい。先生が決めかねているようだったので、念押しでもう一度言いました。「たとえ息子が運動場で転んでケガをしても、万が一死ぬようなことがあっても、僕たちは学校にクレームを言ったりは絶対にしません。僕たちの責任として、このお願いをしています」と。

 黙って聞いていた妻も「そこまで言ってくれるんだ。私もそれでいいと思う」と賛同の気持ちだったらしいです。

 特別対応をしてくださって1年ほどたちますが、相変わらず問題児ではあるものの、行動はだいぶ落ち着いてきて、彼なりに学校生活を楽しんでいる様子でホッとしています。

 ただ、彼の個性を生かせる学び場があれば変えてもいいのではないか、という気持ちはずっとありました。勉強は一時的に遅れたとしても、いつか本人が本気で学びたいと思った時には取り戻すはずです。何より、社会生活で傷ついても、大きな力で包み込み、エネルギーを放出させてくれる自然が近い環境であることは、彼らにとっても救いですね。

将来はどんな道に進みたいとおっしゃっていますか。

井手:木工にハマっている長男は「大工さんになりたい」と。三男はまだそんな話は出ませんが、次男は何を思ったのか「医者になりたい」と言い出しました。「ふーん。頑張れ。でも、今のお前の学力だとちょっと難しいだろうけどな」と言ったら、「おお、勉強してやるよ」と返していましたが、勉強する姿はちっとも見られません(笑)。

 3人のうち長男は読書が大好きで、学校の図書室の本は既に読破したと言っていました。妻の母が定期的に絵本を送ってくださって、家に何百冊とあると思います。夫婦で小さい頃から読み聞かせをしていたので、自然と本好きになっていたのでしょうね。宇宙や物理の話は僕よりも長男が詳しいくらいです。3人とも言葉を覚えるのが早かったのは、本をたくさん読んであげていた影響でしょうか。あと、「家にテレビがない」というのも大きいかもしれない。

自宅にテレビを置いていない。それも子育ての方針でしょうか。

井手:はい。子どもが生まれて今の家を建てるのと同時に捨てました。夫婦が互いに共働きで忙しい上に、子育てが始まればますますテレビをみる時間はなくなりますし、「家族の会話を大事にしたい」という気持ちが強かったですね。家にテレビがないと、家族で話をするか、本を読むか、遊ぶかという生活パターンになるので、会話量は格段に増えると思います。

 たまに旅行先で宿泊した部屋にテレビがあると、「なんだ、これすげー」とくぎ付けになっていて、現代っ子にはあり得ない症状がまた面白いです(笑)。