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 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載27回目に登場するのは、クラフトビールトップシェアを誇るヤッホーブルーイングの井手直行社長。同社は長野県・軽井沢を本拠地としてクラフトビールを醸造・販売しており、井手社長も軽井沢の森の中で3人の息子たちを育てている。最近ではチームビルディングでも注目される同社だが、井手社長は家庭ではどのようなチームワークを発揮しているのだろうか、話を聞いた。今回はその後編。

ヤッホーブルーイング代表取締役社長 井手直行(いで・なおゆき)氏
1967年福岡県生まれ。国立久留米高専電気工学科卒業後、大手電気機器メーカーにエンジニアとして入社。バイク放浪の旅を通じ、「人と自然が好き」という価値観に行き着き、長野県・軽井沢の広告代理店で営業職に就く。取引先だった星野リゾート代表・星野佳路氏から誘いを受け、1997年にヤッホーブルーイングに入社。地ビールブームが去った後に赤字続きだった同社の業績を、ネット通販戦略により回復に導く。看板商品「よなよなエール」のほか、「水曜日のネコ」「僕ビール、君ビール」などヒット商品を生み出し、クラフトビールトップシェアを獲得。現在まで14年連続で増収増益となり、その組織運営にも注目が集まる。2008年より現職。長野県在住。元星野リゾート社員で学校法人へ転職したばかりの妻、11歳の長男、8歳の次男、6歳の三男と5人暮らし。(取材日/2019年1月21日、撮影/鈴木愛子)
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

インタビューの前編では、3人の息子さんたちを自然あふれる森の中で、伸び伸びと育てている様子をうかがいました(詳細は「ヤッホー井手社長『木登り、雪遊び、ときに流血!』」)。息子さんたちの学校選びについてはどのように考えていますか。奥さまが勤務する学校法人が来春に開校するとおっしゃっていましたが。

井手氏(以下、井手):小学校については、今は近くの公立小に通わせていますが、妻が勤める予定の私立校が開校したら、そちらに転校させようと思っています。

 その学校は、子どもの自主的な学びを重視して、異学年を混ぜて勉強を教え合う仕組みも導入するそうです。ユニークな教育方針がうちの子どもたちにも合うだろうと妻とも話していて、試しにサマーキャンプに参加させてみたら、本人たちも「楽しかった」と言っていたので。私立なのでお金はかかりますが、「2人で頑張って働いていこう」と。

学ぶ環境を変えた方がいい、と感じるきっかけがあったのでしょうか。

井手:はい。お恥ずかしい話なのですが、ありました。元気な息子たちの中でもとびきりエネルギーがあるのが次男で、感性が豊かで裏表なく、どこでもリーダーシップを発揮するタイプなんです。

 保育園の先生方は、彼の個性をポジティブに受け止めてくださって、「彼のような子どもは見たことがない。天才です!」とおっしゃってくださって、次男も伸び伸び育っていたんですね。ところが、小学校に入った途端、評価が180度変わって「お子さんは問題児です」と。

 授業中に席を立ってウロウロしたり、授業に関係ない本を読みふけっていたり、友達にちょっかいを出したり。1日に何時間も座ったままで、先生の話を聞く生活に、すぐにはなじめなかったようで、本人もストレスを感じていたのだと思います。友達と仲良くできるタイプだったのに、ケンカも増えました。

 ただ親からすると、次男はこれまでも今も変わらなくて、素晴らしい子どもだという誇りがありました。

 学校からの呼び出しには妻が対応してくれていたのですが、とうとう1年生の秋、「お父さんも一緒にご両親で来てください」と、カウンセラーの方も交えて四者面談が組まれました。担任の先生は本当にお困りの様子でした。

親としての態度を決める場面ですね。