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 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載27回目に登場するのは、クラフトビールトップシェアを誇るヤッホーブルーイングの井手直行社長。同社は長野県・軽井沢を本拠地としてクラフトビールを醸造・販売しており、井手社長も軽井沢の森の中で3人の息子たちを育てている。最近ではチームビルディングでも注目される同社だが、井手社長は家庭ではどのようなチームワークを発揮しているのだろうか、話を聞いた。今回はその前編(後編は3月26日に公開予定)。

ヤッホーブルーイング代表取締役社長 井手直行(いで・なおゆき)氏
1967年福岡県生まれ。国立久留米高専電気工学科卒業後、大手電気機器メーカーにエンジニアとして入社。バイク放浪の旅を通じ、「人と自然が好き」という価値観に行き着き、長野県・軽井沢の広告代理店で営業職に就く。取引先だった星野リゾート代表・星野佳路氏から誘いを受け、1997年にヤッホーブルーイングに入社。地ビールブームが去った後に赤字続きだった同社の業績を、ネット通販戦略により回復に導く。看板商品「よなよなエール」のほか、「水曜日のネコ」「僕ビール、君ビール」などヒット商品を生み出し、クラフトビールトップシェアを獲得。現在まで14年連続で増収増益となり、その組織運営にも注目が集まる。2008年より現職。 長野県在住。元星野リゾート社員で学校法人へ転職したばかりの妻、11歳の長男、8歳の次男、6歳の三男と5人暮らし。(取材日/2019年1月21日、撮影/鈴木愛子)
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

ヤッホーブルーイングは、長野県・軽井沢を本拠地としてクラフトビールを醸造・販売しています。熱狂的なファンコミュニティが製品の人気を支えていることでも注目されています。社長である井手さんも、軽井沢を生活拠点としているそうですね。

井手氏(以下、井手):はい、軽井沢の森の中で、3人の子どもたちを育てています。上から小学5年生、2年生、保育園の年長で、3人とも元気な男の子です。

 もう、毎日が騒がしくて、5分おきにケンカが勃発するような戦場で(笑)。でも、最近ちょっとさみしい気持ちになっているんです。

 というのは、三男がこの春に小学校に上がるので、10年以上続けてきた保育園の送迎生活が、ついに終わるんです。僕の担当は朝の送り。

 うちは運営方針に共感できる保育園に預けたかったので、0~2歳クラスと3~5歳クラスでは、別の園に通わせてきました。だから、三男を送り届けた後に、別の園に次男を送るということを毎朝やってきて。

 雨の朝とか絶望的な気持ちになって、「早くこの生活が終わらないかな」と願っていたんですが、いざ卒園となると、なぜかさみしくなるんですよ。最近の一番の癒やしは、末っ子を送る車中でたわいもない無駄話をする時間。この時間も、もうカウントダウンかと思うと、安らぎにさえ感じられます(笑)。

東京にも頻繁に出張されているそうですが、東京出勤日の朝も、保育園に子どもたちを送っているのでしょうか。

井手:はい。保育園に送ってから新幹線に乗って間に合う時間に、会議や打ち合わせの予定を組んでもらっています。もちろん、先方の都合を優先すべきときは対応しますが、そうでない限りはできるだけ、家庭の生活リズムを大切にしています。

 東京での仕事開始は、大体朝の11時から。滞在時間は短くなりますが、その分、濃密に仕事をしたいと思っているし、社員にも理解・協力をしてもらっています。

子どもの行動は予測不能で、「着替えたくない!」「今日は保育園に行かない!」と駄々をこねたり、家を出る直前にいきなり「パパ、うんち」と言い出したり、冷や汗をかく瞬間の連続ですが、それでも一度も仕事に遅刻したことがないのは、僕のちょっとした自慢です。