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 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載26回目に登場するのは、元伊藤忠商事の社員で、ビジネス教育系YouTuberとして活躍する長内孝平氏。長内氏は一人娘が生まれてから、実家のある青森にUターンすることを決めた。誰もがうらやむ総合商社を辞し、実家に帰った狙いとは何なのか。そして今、一人娘の子育てに、どんな風に関わっているのか、話を聞いた。今回はその前編(後編は3月12日に公開予定)。

Youseful代表取締役/ビジネス教育系YouTuber 長内孝平(おさない・こうへい)氏
1990年青森県生まれ。神戸大学経営学部在学中に、米ワシントン大学に留学。大学卒業後、2015年に伊藤忠商事に入社し、会計・税務を専門としてトレード・投資案件のプロジェクトに従事。同社在職中から、エクセルをはじめとするITツールの活用法を動画で分かりやすく配信する「おさとエクセル」を運営。2018年7月、同社を退職し、Yousefulを設立。同年11月から故郷の青森に拠点を移し、子育てと配信事業を両立させる。同番組では累計140本をリリースし、視聴再生数は180万回を超え、番組登録者数は教育系では大ヒットとなる2万9000人を突破。Excelの短期集中トレーニングプログラムを独自に開発し、企業研修なども行う。『Excel 現場の教科書』(インプレス)が好評発売中。青森県在住。元英会話講師の妻、0歳7カ月の長女、母と4人暮らし、父は秋田に単身赴任中。(取材日/2019年1月18日、撮影/鈴木愛子)
本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

長内さんは大手総合商社の在職中から、表計算ソフトに特化した“ビジネス教育系YouTuber”として活躍し、2018年7月に会社を辞めて独立。「おさとエクセル」というチャンネルに動画を投稿しながら、退社と同時に、第一子の子育てもスタート。現在は故郷・青森で事業と子育てを両立させる働き方を実践中だそうですね。

長内氏(以下、長内): はい、娘が生まれたのが2018年の7月ですが、同月に3年4カ月勤めた伊藤忠商事を辞めて、翌月に起業しました。まさに子育てと同時に、僕の新しい人生が始まりました。

YouTuberとして独立するプランはもともとあったのでしょうか。

長内:はい。僕は人生のミッションとして、「いい世の中をつくる個人を増やす」という志を掲げていて、学生時代から細々と活動をしてきました。

 総合商社という職場にはとても希望を持てましたし、先輩や同僚にも恵まれていました。でも、5年後、10年後に働くイメージが少しずつ見えてきたとき、自分自身が成し遂げたい目標は達成できないかもしれないというジレンマを抱えるようになって……。

 より個人の人生に直接、影響を与えることのできる活動に重きを置きたいという気持ちが日に日に膨らんでいきました。子どもが産まれるとますますその思いが強くなって、会社のミッションに適応する自分が想像できた時、「決断するのは今しかない」と思いました。

 会社員時代からYouTuberとしての活動は始めていて、ありがたいことにたくさんの人に見ていただいていたので、「もっと本腰を入れてチャレンジしよう」と思い切りました。

機を逃したくなかったということですね。青森で暮らすことも、同時に決断したのでしょうか。

長内:それは、あとから決めました。まずは「商社マン」という肩書きを捨てて、まだ目立った成功事例のないビジネス教育分野のYouTuberとして一旗あげることを心に決めました。その上で、「ではどこで、誰と暮らして、それを目指していく?」と考えたんです。

 YouTuberは、インターネット配信ができる環境であれば、どこでも働ける職種なので、選択肢は無限にあるんです。

 生まれ故郷の青森に帰ろうと決めたのは、退職の3カ月くらい前。僕はもともと、「子育てにはしっかり関わりたいし、楽しみたい」という気持ちが強いほうで、それが叶う環境として、実家での二世帯生活を選びました。

 青森に一戸建てを構える実家で生活すれば、首都圏と比べると、はるかにゆとりのある自然豊かな環境の中で、子どもを伸び伸びと育てられます。両親の理解を得て、実家の2階を防音仕様にリフォームして、スタジオとしても使える僕の「職場」に改装しました。