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「最低3つの肩書きをつくれ」

田中:「勉強しなさい」とは言いませんが、「真面目に取り組んで、損をすることは1つもない。結果的にトップをとると、チャンスが来やすくなるよ」とは伝えています。先生や周りの人たちの信頼を得て、やりたいことを任せてもらいやすくなるんだよ、と。

 長女はまだのんびりしていますが、余力がある分、本気でスイッチが入れば伸びるだろうなと、私もその時を楽しみにゆったり構えています。

 繰り返しますが、同質集団の狭い指標だけに私自身の価値判断も左右されないように心がけています。学歴による成功も確率論でしかありませんし、長い人生において、その違いは誤差でしかない。それが基本的な考え方です。

キャリア研究の専門家として、お子さんへのキャリア教育はどのようになさっているのか、気になります。

田中:社会はこれから大きく変わっていきます。今ある職業だけで将来を考えないほうがいいということ。もう一つ、娘たちにはよく「最低3つの肩書きをつくれ」と伝えています。パラレルキャリア、ですね。

 それも今までやってきたことが自然につながる形でイメージできるように、「例えば習字をずっと続けていけば、習字の先生になれるかもしれない。テニスを続けていけば、テニスのコーチにもなれるかもね」と。それで肩書き、2つになるね。あと、1つ何しようか?と聞くようにするのです。

 自己を変芸させながら、パラレルにキャリアを構築していく、という「プロティアンな英才教育」をしているのです(笑)。もちろん、子どもたちは、そのことについて本質的に理解しているわけではないですが、自ら考え、取り組み、挑戦すること。それは、やりがいもあって、楽しいことなんだよ、ということは感じているはずです。

 何でも継続すれば、“生み出す側”になれるし、お金をもらえるようになるんだよと伝えています。日本では「学業」と「就業」を分断して考えがちですが、本来は子どもの頃からずっとつながっているものであるはずです。

 今好きなこと、やっていることが将来の仕事になるかもしれないし、それを一つに絞る必要はないはずです。

 これは普段、学生に対して言っていることとも全く同じで、私にとっては娘たちも“最年少ゼミ生”のようなものです。実際、大学にもよく連れて行きます。

 娘たちが社会の先輩たちに触れる機会を大事にしたいし、学生に対しても、教授である私の、父親としての側面を見せることが、彼らの将来設計にプラスに働くんじゃないかと考えているからです。その効果なのか、私のゼミ出身者は、早く家庭を持って親になる子が多いんですよ。